新型フィット 刷新されたHVの実力は?
「e:HEV」は、基本シリーズハイブリッドだから、ゆるやかにアクセルを踏み込めば、モーター駆動で滑らかに走り出す。
加速レスポンスはアクセルの踏み加減にリニアに対応していて、加減速を繰り返す市街地のクルマの流れにストレスなく乗ってゆける。このあたりのマナーのよさは、明らかに前モデルの「i-DCD」よりうわ手といっていい。
市街地レベルではEV走行の割合も多く、30km/h以下でストップ&ゴーといったシチュエーションでは、滅多にエンジンは始動しない印象。
もうひとつ、このe:HEVの好ましい点は、どんどんアクセルを踏み込んでいってもエンジンだけ吹き上がったりしないこと。
ある程度以上のアクセル開度になると、エンジン回転数と加速感がシンクロするように制御され、あたかも有段ATを自動シフトしているようなリズム感のある加速が体感できる。
パフォーマンスについても、駆動用モーターの25.8kgmというトルクは、同じホンダでいうと1.5Lターボを軽く上回る数字。高速道路の合流など、加速を必要とするシーンでは余裕のポテンシャルを味わうことができた。
ドライバビリティについては、やはり「心地よい」という表現がピッタリかもしれない。狙って作り込んだとすれば大したものだし、これまでのホンダ車とはひと味違う走りのキャラクターに仕上がっているように思う。
課題はガソリンモデルの乗り心地!?
いっぽう、今回の公道試乗で期待値に届かなかったのは、操安/乗り心地などのシャシー性能だ。
2019年秋に鷹栖テストコースで試乗した際には、しなやかな足に感銘を受けた記憶がある。とりわけ、ワインディングでは長めのリバウンドストロークでボディ上屋を上手にコントロールしている快感があって「心地よい足とはこれか!」と大いに感心したのだ。
しかしながら、あらためて一般公道で走らせてみると以前ほどの好印象はなく「このセグメントの平均よりちょっといいかな?」というレベル。
まぁ、一般公道はホイールストロークの小さい領域での挙動が勝負だから状況は異なるのだけれど、「もうちょっと頑張ると思ったんだけどなぁ」という物足りなさが残った。
これは、車両重量が100kgほど軽い1.3Lガソリンモデルに乗るとより顕著で、細かく荒れた路面を通過するときのバタバタ感などが、e:HEVより増幅されて伝わってくる。
e:HEVでは感じられる“走りの質感”が、ガクッと落ちる印象があるのは残念。ホンダ車は鷹栖テストコースでセッティングしているためか、一般公道に持ち出すと鷹栖の評価を超えられないケースが多いが、今回のフィットもその例外ではなかったといわざるを得ない。
総括するならば、デザイン、インテリア、使い勝手については「心地よさ」というテーマは狙いどおりピッタリ。ドライバビリティについても新しいe:HEVが大健闘、1.3Lガソリンも合格点。
あとは、シャシーがもうひと頑張りすれば、日本のコンパクトカーに新しい価値観を打ち立てる傑作になると思います。さらにいっそうの奮起を期待したいところです。
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