■「キャズムの谷」を超えるには60kWhモデルが必要!?
というわけで、ここまではすべてハッピー。新型リーフは前モデル最大の欠点だったスタイリングをがらっと模様替えして、エッジの利いたスタイリッシュなボディをまとったこともあり、スポーティさやオシャレ度も大幅アップ。
究極のエコカーというイメージに飛びつく新し物好きだけではなく、より幅広いユーザー層にアピールできるEVに進化したといえる。
しかし、ではそういう”幅広いユーザー層”が新型リーフに飛びついて売れゆきが倍増するかといわれると、やっぱりウームと考え込んでしまうのだ。
悩ましいのはいうまでもなく航続距離の問題。新型リーフの航続距離はJC08モードで400kmだが、ご存じのとおり実用上はその7掛けくらいが相場。
実際、今回の試乗でもそのくらいの電費を示した。ごくごく普通のユーザーが280〜300kmの航続距離で満足できるか。いつもながらそこが問題になる。
マーケティング用語に”キャズム理論”というのがあって、ハイテクな新製品にはまずヲタク(イノベーター)が飛びついて、次に新し物好き(アーリーアダプター)が手を出す(このへんではまだ普及率は10~15%くらい)。
その製品が本当にブレイクするためには、感度の高い一般大衆(アーリーマジョリティ)が買ってくれないとダメなのだが、新し物好きと一般大衆の間には”キャズムの谷”という大きなギャップがあって、この谷を越えるには何か決め手となる強力なセールスポイントが必要とされる。
何が言いたいのかというと、新型リーフの実用300kmという航続距離は、この”キャズムの谷”を越えるのに充分か、というハナシ。
ユーザーの事情は十人十色だから一概には言えないんだけれど、集合住宅住まいで充電設備のある自宅駐車場を持っていないぼくの感覚では、「まだちょっと足りないなぁ」というのが実感なのだ。
このあたりの”相場観”は人によってずいぶん違うので、最近は会う人ごとに「リーフってどうよ?」と聞き回っているのだが、本誌でもおなじみ国沢センセの「電池容量60kWhくらいにブレイクポイントがあるのでは?」という言葉が、ぼくにとっていちばんストンと腹に落ちる意見だった。
なんたって国沢センセ、EVについては業界随一の論客だしね。
つまり、キャズムの谷を越えるには実用で450kmくらいの航続距離が欲しい。それならば、自宅に充電設備がないぼくのようなユーザーでも、価格次第では乗ってみようと重い腰を上げるんじゃないか、それが実感なのだ。
今回試乗したリーフは最上級モデルのGで車両価格約400万円。ここから補助金40万円を引くと、ざっくりプリウスPHVと競合する価格帯にある。
アーリーアダプター層には今度の新型リーフはかなり訴求力がアップしたのは間違いないが、日産の本当の狙いはキャズムの谷を越えて普通のユーザーを引っ張ってくること。
だから、無理を承知で言わせていただければ、標準プリウスと真剣に迷うくらいのアグレッシヴな価格設定か、あるいは400万円で買えるバッテリー容量60kWhモデルが欲しい。そのへんにブレイクポイントがあるような気がいたします。
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