■怯えずにアクセルが開けられる!
パワーウォーズとは少し別のところに、並列4気筒エンジンの魅力はあります。回転上昇フィーリングが最高に気持ちいい! それこそフェーザーを思い出させる爽快さで、「回す楽しさ」を感じさせてくれます。1000ccのガチなスーパースポーツでは、恐ろしくてそうそう回し切れませんからね……。
はっきり言って僕がサーキットで走らせるにしても、1000ccスーパースポーツに対しては身構えますし、怖い。それなりに気合いを入れる必要があります(笑)。
でも、ZX-25Rなら少なくとも「怖い」と感じることはありません。カッチリとストッパーに当たるまで躊躇なくアクセルを全開にできる感覚は、パワフルなリッタースポーツバイクに比べるととても気軽で、カジュアルに楽しめるバイクだな、と思いました。
手の内にある“ちょうどいい”感じは、僕のようなレース経験者じゃなくても、多くのライダーの皆さんが得られるものではないでしょうか。これは250ccという排気量の大きなメリットですね。背伸びして扱い切れないバイクを走らせるより、手の内にあって操る喜びを味わえるバイクの方が、結局は楽しめます。
テスト当日は、K-FACTORYのフルエキゾーストマフラー装着車にも試乗しました。ノーマルはかなり静かで、走らせている時には思っているほどエンジンサウンドが聞こえないんですが、K-FACTORYのフルエキゾーストマフラーではしっかりと耳に届きます。
JMCA認証品なので音量が極端にノーマルと違うわけではありませんが、いかにも直4らしい甲高い音はとてもエキサイティングで、走らせていて本当に気分がいいですね。
■クラスを超えた上質感が最大の魅力
車体まわりにも不満はありません。250ccスポーツバイクというカテゴリーからすると、若干動きがまったりしているかな、と思いますが、何しろエンジンのシリンダー数が他の並列2気筒モデルに比べて倍ありますからね。そりゃあ多少重たくもなります。
スペックを比較しても、同じカワサキでも2気筒のニンジャ250Rに対して、20kg弱重くなっています。でも、街乗りレベルの走りをしている分にはまったく気にならないレベルです。
試乗したのはグレードが上のSEモデルだったので、クラッチ操作不要でシフトチェンジ可能なクイックシフターが標準装備されていました(※註:STDではオプション)。このクイックシフターの出来もいいですね。シフトアップ/ダウンとも節度感のある作動です。
ZX-25Rは低回転域のトルクはやはり並列2気筒よりどうしても細いので、「ギアを変えずに走り切る」といったズボラな走りはあまり向いていません。頻繁にシフトアップ/ダウンを繰り返すことになるので、クイックシフターの装着はありがたいですね。
「パワーウォーズとは別のところにあるZX-25Rの魅力」は、まだあります。それは上質さ。エンジンフィーリングの滑らかさは、ただ気持ちいいだけではなく、クラスを超えた「いい乗り物」に乗っている感じを味わわせてくれます。
これはエンジンだけの話ではありません。600ccクラスのZX-6Rとほぼ同じ車体寸法というゆとりのある車格やハンドルまわりの凝縮感など、ZX-25Rは所有感を満たしてくれるバイクに仕上がっています。
250ccクラスに見受けられがちな「これぐらいでいいんじゃない?」という妥協は、ZX-25Rからはほとんど感じられません。実際、ASEAN諸国では250ccはスーパースポーツクラス。
ZX-25Rはフラッグシップモデルにあたりますから、エンジンチョイスも含め、やるだけやるのも当然かもしれません。カワサキの本気は、しっかりと感じられました。
ただ、ちょっと価格は高いかな……(STD・82万5000円〜SE/KRTエディション・91万3000円)。パッケージの内容と時代を考慮すれば企業努力は感じますが、いかんせん高い。この価格帯だと、600cc前後のミドルクラスも十分に視野に入ってきますからね……。
とは言っても、僕自身はいろんな選択肢があることはいいことだと思っています。並列2気筒エンジンのニンジャ250でカテゴリーを牽引してきたカワサキが、今度は並列4気筒で話題を振りまき、再び250ccクラスに旋風を巻き起こしたことは、本当に価値があること。
他メーカーも追随……なんていうのは、夢物語でしょうかね……。
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