走りを楽しめるスポーツモデルにも今やFF車をベースとしたモデルが多い。しかし、FR(=フロントエンジン・リアドライブ)車ならではのハンドリングには代え難い魅力あり!
なかでも国産FRスポーツの代表的車種である、トヨタ 86、スバル BRZ、マツダ ロードスターの3車を、元スーパーGTドライバーの山野哲也氏がじっくり解説。プロの目線からみた走りの違いとは?
文:ベストカー編集部
ベストカー2018年3月10日号
ノーマル以上に優れる86 GRの“安心感”
まずはトヨタ 86 GR。スッーと走り出した瞬間から『違い』を感じる。
ボディがガッチリしていて足がしなやかに動いてくれて、ちょっとした段差を乗り越えた後の収まりがいい。ショートストロークのシフトノブは動きがスムーズで気持ちいい。エンジンに変更はないものの、シフト操作のリズム感がよく、気持ちよく走ることができる。
低速コーナーの立ち上がりでアクセルを踏み込んだ時のトラクションがよく、しっかりと路面を捉えている。ノーズの入りもよく、プッシングアンダー(アクセルを踏み足した時に発生するアンダーステア)を感じることもない。
少し速度を上げてスラロームのような左右の切り返しをすると、ノーマルの86で感じた操安性の不安定なところがなく、高いスタビリティで安心して動かすことができる。
ノーマル86はこのような場面でスピンモードに入りそうな動きを感じ取りながら慎重にコントロールすることが求められるのだが、こちらは圧倒的に安定している。
ブレーキは初期タッチから制動力がグッと立ち上がる。ブレーキペダルを踏み始めてから実際に効き始めるまでのペダルストロークが小さく、減速Gの立ち上がりもシャープ。これはいいブレーキ。
どんな速度域からでもイメージした制動力をドライバーの意思でコントロールしやすいブレーキだ。
パワステの制御もノーマルとは変わっているのだろうか、ステアリングを操作する感覚が“しっとり”としていて上質。
切り始めは比較的軽いのだが切り込んでいくと重さが増していき、戻しの動きにも適度な重さがある。あたかもステアリングの動きにダンパーが効いているような印象で上質な操舵感だ。
ちょっとネガを感じたのが発進時のクラッチのつながりとエンジントルクの立ち上がり感のアンマッチ。
クラッチペダル自体にちょっと引っかかり感があることに加え、ミート時少量のアクセル操作に対しエンジン回転がイメージした以上に上がってしまい、ちょっと過敏な印象だった。
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