VWゴルフ GTI 16Vがついに上陸!【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

■回転の上昇とパワーが一体

 2代目になったゴルフにもGTIはあったが、8バルブのSOHCエンジンで105馬力にとどまった。初代のような走りを求めもっとパワーが欲しい。ファンは皆そう思った。

 そういった事情があるだけにお待ちかねのVWゴルフGTI 16Vの日本登場である。GTI 16Vのエンジンはヴァルブはさみ角が25度と狭く、タイミングベルトは片方のカムシャフトにかけ、もういっぽうのカムシャフトをチェーンで回すというやり方。

 この種のDOHC4ヴァルブエンジンは世界的にも最近ちょっとした流行である。

オールアルミの1.8L DOHC16バルブエンジンは本国仕様の139ps仕様ではなく触媒の付いた125ps(8バルブモデルは105ps)仕様だった。ただし、DIN表記で実質129psというハイパワーだった
オールアルミの1.8L DOHC16バルブエンジンは本国仕様の139ps仕様ではなく触媒の付いた125ps(8バルブモデルは105ps)仕様だった。ただし、DIN表記で実質129psというハイパワーだった

 ポルシェ944、928、そして日本のトヨタ・カムリ・ビスタの3S-FEエンジンなどいずれも思想は同じで、その目的は高効率にある。

 ゴルフに搭載されたエンジンもVWのエンジンの常で実に存在感のある回り方をする。

 つまり回転の上昇につれ、回ったぶんだけ馬力を感じさせるものなのだ。国産車のエンジンでもよく回るものは多いが、どこかカラ回り的フィールを残す。

 この点VWのDOHCエンジンは回転の上昇と加速の高まり感がピッタリあっていて実に気持ちいい。

試乗中の一コマ。徳さんの表情から、伝わるものがあれば嬉しい
試乗中の一コマ。徳さんの表情から、伝わるものがあれば嬉しい

 2500回転あたりから充分なトルクを感じさせ、この回転からでもフォースギアで不満のない加速を示してくれる。

 最も有効かつ気持ちいいところは5000回転あたりで、サードギアを使っての加速フィールはとてもスポーティだ。7000回転まで回るものの、少し詰まっているので6800~6900回転でシフトアップするのがいい。

 しかもこのエンジンはその目的どおりとても経済的だ。特に連続の高速ドライブでは国産車のDOHCエンジン搭載車とは比べものにならない。国産車の1.6L DOHCエンジン搭載車より30%近く燃費がいい。

 実際アウトバーンなど欧州の高速道路を120km/h中心で走ると、驚くばかりの高燃費を記録する。このあたりがドイツ車の実力だろうか。

■そのしなやかで重厚な乗り味は驚き

 エンジンもさることながら、乗り心地のよさも驚くほどだ。

 ストロークがあり、ダンピングの効いたサスペンションで、ひと回りもふた回りも大きな重いクルマのような乗り心地をみせる。

 やはりVWゴルフはロングツーリングに適しているのだ。しっかりとしたよいシートと気持ちのいいサスペンションがゴルフGTI16Vの魅力だ。

 ハンドリングも素直でしっかりとしたレスポンスがある。ノーズの移動がスムーズで、FFらしい強いアンダーを感じさせることもない。

 ただし、このクルマをよりスポーティに乗ろうとしたら、もう少しダンパーやスタビライザーにハードなセッティングを望むかもしれない。

 箱根のハイスピードコーナーではややロールがきつく、それにタイヤ(コンチネンタルの185/60R14)もやや横剛性不足を示した。

 ブレーキは充分なキャパシティで、何度もハードなブレーキングをしたが、踏力もさほど変わらず、効き味もじんわりと踏力に応じて効いてくれるタイプだった。

 VWゴルフGTI16Vはファミリーカーとして少しも妥協したところがない。日本仕様は今のところ2ドアだけというのは惜しまれるが、4ドアならばスポーツカーとファミリーカーを所有したようなものだ。

’87年3月に発売された当時は左ハンドル5MTのみだった
’87年3月に発売された当時は左ハンドル5MTのみだった

 VWゴルフGTI16Vは完全に近いレベルでのトータルバランスを持つ。その点可愛くないといえば、これほど可愛くないモデルもない。

 言い換えれば、このGTI 16Vがあらゆる性能を追求せず、その一歩手前でやめていることからくるものだ。それが余裕につながり、高い完成度を感じさせるものなのだ。

 VWゴルフGTI 16Vの完成度の高さは日本に新しいプレステージカーの流れを作るかもしれない。

発売当時は2ドアのみ。4ドアのGTIが追加されたのは翌’88年からとなる
発売当時は2ドアのみ。4ドアのGTIが追加されたのは翌’88年からとなる

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