徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は、トヨタが1970年から2006年まで製造・販売していたセリカのなかから、セリカXX 2800GTを取り上げます。
セリカXXとしては2代目となるA60型の誕生は1981年7月のこと。XXは北米でフェアレディZに対抗すべく開発されたクルマでしたが、この2代目は日本でも大人気となりました。理由はソアラと同じ5M-GEU、直6DOHC 2.8Lエンジンを搭載したこと。
CMでもロータスを作ったコーリン・チャップマンを起用し、スポーツ色を全面に押し出しました。徳さんもその実力を認めたベストカーガイド1981年9月号初出の試乗記を振り返ってみましょう。
※本稿は1981年8月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年12月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■高級クーペ、ソアラのエンジンユニットを受け継いだXX
2.8L、ストレート6、ツウィンカムユニットのパワーとスムーズさは、やはりたいしたものである。
170馬力も24kgmも、慣れてしまえばどうってこともないのも事実である。むしろ、このユニットの5M-GEUで感心するのは、低速から6000rpmまでムラなくフケ上がる、そのスムーズネスにある。
このフィールは、間違いなく高級である。それは、つい先だってまでは、BMWのビッグシックスでなければ得られないものだと思っていたのだ。
このユニットを用いてトヨタはソアラを世に問うた。それは細かいところはさておくとして“まるでBMWのような” “まるでメルツェデスのような”贅沢なドライブフィールを味わわせてくれた。そして、トヨタはセリカXXにも、このユニットを与えた。
ニューセリカファミリーは、たしかにボディスタイリングが劇的に生まれ変わったと思うが、デザインポリシーで最も大きな変化を受けたのはXXである。
新型XXはロングセリカではなく、基本ボディこそリフトバックと同じでありながら、あたかも独立したシリーズと思えるイメージを持つに至った。
新しいセリカはソアラのようにプレスドアは使わなかったし、グラスエリアも冒険を避けているが、XXには野性味が感じられる。全幅は1685mmだが、これは少し狭い。
せめて1750mmくらいあればバランスがいいのにと思う。また、ブラックのバンパーがマットではなく、ツルツルに光っている。テールゲートからリアスポイラー、バンパーとどれも皆、黒のツルツルなのが、ややケバケバしく見える。
それはともかくとして、ニューセリカXXは、旧型に比べ間延びした印象はなく、大いに男性的なイメージとなったように思う。
コメント
コメントの使い方