■この加速は神の世界のものだ
ポルシェ959の最も劇的な要素は間違いなく“加速”である。DOHCツインターボは、はじめひとつが作動し、途中からもうひとつが加わるというもので、トルクのピークは5000回転。そこから2300回転の間、それこそこの世のものとは思えないほど激しい加速が展開される。
問題はそのいき方だ。一気にガバッとばかりガスペダルを踏んでしまうと、4000回転を超えるまでターボそのもののいらだちを感じさせる。しかし、4000回転を超えたあたりから暴力的な加速、それはまるで神が怒ったかのような、恐ろしくも素晴らしい加速なのだ。
高いところから一気に落ちていくような、暴風雨のなか、風と雨に押しつけられるような、ゾクゾクする感覚をドライバーに与える加速なのだ。
これまで一周5.5kmの谷田部コースが狭いと感じたことはなかった。250km/h級のクルマなら、それこそ鼻歌まじりで走れないことはない。しかし、スピードとは恐ろしいものである。250km/hに10km/hプラスするだけで、バンクの風景は変わる。
20km/hプラス、すなわち270km/hになるとバンクが壁のように私の目の前に立ちはだかる。フェラーリ512BBがこれに近く、確か280km/hくらいだった。
しかし、ポルシェ959のスピードメーターは300km/hをわずかに超えている。そして、メーター自体は350km/hまで刻まれているではないか。
クルマはバンクを走っている時、外へ外へと行こうとする。アウト一杯に出た959とやや身体を硬くして左へとスティアする私の闘いが一瞬の間に行われる。
後にカメラ氏に聞けば、ガンさん(黒澤元治/自動車評論家、元レーシングドライバー)はここでややカウンター気味のフォーホイールドリフトを演じて見せたという。“なんていうやつだ”ポルシェ959もすごいが、ガンさんもものすごい。

■この技術がポルシェの将来そのものとなる
959は現在考え得る自動車技術の粋を網羅している。設計だけでなく工作技術の高さも要求される。当然コストの高さは避けて通れない。
たくさん作ろうとしても作れない宝石のような技術、これをポルシェはやってみたかったのだ。その技術こそがポルシェの将来そのものである。
いまや4ドアの乗用車が250km/hを出し、ちょっとしたスポーティカーがエレクトロニクスなどでよいハンドリングを得る時代だ。
ところが“ちょっとした技術”ではできないものを作って見せたところにポルシェらしさがある。959にはフェラーリのようなロマンティシズムを感じられない。そこにあるのは、とにかくすべてにわたって世界最高、そして無二の機能である。
もし、日本の公道で法律を度外視して走って楽しいのはフェラーリであろう。しかし、アウトバーンになると959以外考えられない。こいつが一番だ。959はビジネスジェットなんてものじゃない、ビジネス戦闘機なのだ。
◎ポルシェ959 主要諸元
全長:4260mm
全幅:1840mm
全高:1280mm
ホイールベース:2300mm
エンジン:水平対向6気筒DOHCターボ
排気量:2848cc
最高出力:450ps/6500rpm
最大トルク:51.0kgm/5500rpm
車重:1450kg
トランスミッション:6MT
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
価格:42万マルク(当時のレートで約3600万円)
総生産台数:292台
本誌テストデータ
0〜400m加速 12.20秒
0〜1000m加速 22.44秒
0〜100km/h加速 4.18秒
最高速度 305.23km/h




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