徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はポルシェ959を取り上げます。
1986年に限定発売されたモデル「959」は、ポルシェでは初となる四輪駆動が採用されるなど、当時の最先端技術が投入された文字通りの“スーパーカー”でした(平均大卒初任給が14万4500円だった時代に約3600万円!!)。
そんなポルシェ959の日本初上陸モデルを、徳さんが谷田部と箱根でドライブ。谷田部のバンクでは300km/hの大台を突破、箱根ではロードカーとしての最高性能を楽しむ至福の時間を得ました。
1987年9/26号のドラマチックな試乗記をリバイバルします。
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年3月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■インテリアこそ911に似ているが…
ポルシェ959のドライバーズシートはほとんどポルシェ911に近い。ダッシュボードの形状やシートも911と同じだ。911同様小さなリアシートもある。
ペダルレイアウトやスティアリングの角度、シフトレバーの位置もすべて911と同じだから、911に慣れている私にはこのクルマが300km/h以上の高速を出せることがむしろ不思議に思えるくらいなのだ。
スターターを回すと、2848cc、フラット6、ただし、シリンダーヘッドはDOHC4ヴァルブ化され、しかも水冷というポルシェエンジニアリングの粋を集めたパワーユニットは静かに回り始める。
そのいっぽうで、911では経験し得ない表示がドライバーに情報として与えられ始める。4WDのパワースプリットはトラクション(ロックの状態)、雪のマーク、雨のマーク、ノーマル(もちろん4WD)と4つから選択できる。この日は快晴だったのでノーマルを選択する。
クラッチはオイルプレッシャーのシングルプレートで思ったよりも軽い。少なくとも450馬力という途方もないパワーを伝えるクラッチではない。スタートはあっけないほど簡単だった。
谷田部のテストコースを速いクルマで走るとき、“はじめはゆっくりいこう”といつも思う。しかし、3分の1ラップもすると全開になっているものだ。
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