「惜しい」のは乗り心地だけ? ホンダ党好みの走りは超硬派
試乗会場は清里方面。ワインディングも多く、なにより降雪地帯なので路面が良くない。つまり、乗り心地やサスペンションの動きを観察するには絶好のシチュエーションだ。
走り出してまず感じたのは静粛性の良さだ。遮音にはかなり手を入れている。例えばトーボードを含めたキャビン全体の振動感がない。本当にカッチリした、まるで堅剛なカーボンファイバーのボディに乗っているかのようだ。サスペンションは後で触れるが、決してソフトではない。しかし、清里の悪い路面から伝わることが予想される二次振動がまるでない。
それゆえ室内は本当に快適。これにはホイールへのリゾネーターの追加や、前後アンダーパネルの振動伝達特性を改良し、ピラー内への発泡剤注入を含めた数々の遮音対策のたまものだ。
もう一つ、今回エンジンのNV(=音振)特性を見直し、高剛性クランクシャフトと高剛性オイルパンを採用している。これによってエンジンの振動感がとても低く抑えられているのだ。
では気になる走りはどうか。1.5Lターボは停止状態からスムーズに加速する。3人乗車(筆者・編集・カメラマン)だったのだが、市街地レベルの実用速度域も山の登坂路でも、全く過不足を感じさせず自由に気持ち良く移動できる。3人乗ると若干足の硬さを感じるが、シートのクッション性とも相まって嫌味ではない。
逆にホンダファンはこれぐらいの硬さがないとつまらないと言うだろう。このことはスバルファンにもいえることだ。しっかりしたサスペンションはコーナリングで素晴らしいポテンシャルを発揮した。
前述したようにボディが堅剛なので、ステアリングを切り始めた瞬間からフロントの応答は速い。しかし、速いが唐突感は皆無。とても自然なハンドリングで曲がり始める。EPS(電動パワーステアリング)のプログラミングを煮詰めたそうで、これも大きい。
初期応答からステアリングを切り足していく。さらにアクセルを踏み込む。もうフロントタイヤが音を上げるだろうとの予想をはるかに裏切ってどこまでも曲がってゆく。正直これには驚いた。サーキットのような鏡面路面ではなく多少の凸凹路面だ。
そしてリアのグリップが安定している。かといって前後バランスでフロントを押し出すわけでもない。ホイールベース延長、リアトレッドワイド化。このあたりも効果を出しているのではないだろうか。走り込むうちにどんどん楽しくなってきた。
また、3人乗りよりも1人乗りの方が乗り心地も良くなったように感じる。ただし、走りの気持ち良さが速度に関係なく感じられ、乗り心地も同時にこれで良いと、硬さを感じなくなるから不思議だ。
ただし、乗り心地も上を見ればきりのないところだが、例えばタイプRに採用されるような電子制御による可変減衰ダンパーを採用すれば、さらに良くなることだろう。
コストアップが気になるところだが、ここまでボディ剛性が堅剛なのだからマクロなサスペンションコントロールによってハンドリングもより進化するはず。ボディが良いだけにもったいないと感じたところだ。
注目の6MTとCVTで新型シビックはどう変わる?
さてCVTと6速MT。個人的にCVTはこのエンジンの特性をしっかり引き出していると感じた。
CVTにはECO・NORMAL・SPORTの3種類の走行モードがあるのだが、SPORTモードでは全開加速時のステップアップシフト制御やブレーキ時のステップダウンシフト制御、さらにパドルシフトなど、しっかりとエンジンの有効回転域を使うことができる。またアクセルON/OFFでのダイレクト感もパドルを使っていればかなり高い。
では6速MTはというと、やはりギア固定でコーナリングするダイレクト感はMTならではのスポーツ感。約30kg軽量であることもハンドリングの素直さを感じられる。固定ギアでトップエンドまで引っ張るときのエクゾーストノートの気持ち良さは格別だ。
ひとつ気になったのは、シフトレバーが若干左寄り。輸出がメインだろうから仕方ない。またクラッチペダルが軽すぎる。慣れの問題ではあるが、今回シフトストロークもショート化され小気味よく決まる。シフトとクラッチは密接な関係にある。リズムとタイミングを合わせるにはもう少しだけクラッチを重くしたい。
最後に安全面ではACC(先行車追従型クルーズコントロール)が、渋滞対応0km/hから使用でき、車線内維持支援のLKAS(車線維持支援システム)も65km/h~だったものが0km/hになった。
これにはフロントカメラの視野角が100°とワイドになったことも大きい。踏み間違い衝突軽減システムも新たに追加されるなど、安全面の進化注入も見逃してはならない。
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