■新型シビックの6MTはS2000を彷彿とさせる!?
さて、これらのことを念頭に置き、新型シビックの6MTモデルに試乗してみよう。まず走り初めに必ず踏み込むクラッチペダルが軽い! ちょっと軽4輪のよう。
まぁRSモデルではないわけだし、実用性を考慮してのことだろう。このため比較的ショートストロークのシフト操作とシンクロしない部分もあったが、ペダルストローク自体が長すぎず短すぎずちょうど良い長さなので慣れてしまう。
シフトそのもののフィーリングは、シフトした時のゲートのカッチリとしたわかりやすい剛性感が好ましい。スコンと入るのと、いま何速ギアに入っているのかがわかりやすい。
しばらくギアホールドで走っていて、アレ? いま何速に入っているんだっけ? というときにも、スッとシフトノブに手を置いただけで何速ギアなのかわかる。これが本当の剛性のあるMTだ。
かつてS2000のMTがそういうMTだった。FRだからエンジン縦置きの後ろにギヤボックスが連結されていて、ちょうどシフトノブがほとんどリンケージを介さずに直接ギヤを動かしているダイレクト感。
それゆえシフトストロークは世界中のどのスポーツモデルよりも短かった。筆者の経験のなかでS2000より短かったのは、F3000マシンやグループCカーといった純レーシングカーぐらいだ。
話を戻そう。この新型シビックではFFゆえにエンジンは横置き。シフトはワイヤーでエンジンの隣にマウントされるギアボックスと連結されている。それでいてこのショートシフトで剛性感はよくできているといえる。
■「このままタイプRが出てきたら…」と思わせるどコーナリング性能
1.5Lターボエンジンは、クランクシャフトやオイルパンの剛性アップをおこない余計な振動を抑えたとのことだが、高回転域に至ってもストレスなくスムーズに回る。ただ、アクセルオフによってシフトダウンする時の高回転域からの回転落ちは少しダルイ。
このモデルがRSなどといった尖ったグレードではないのだから、当然といえば当然なのだろう。しかし、このようなちょっとしたことが感じ取れるのもシャシー、ボディ、サスペンションの剛性感が非常に高いからだ。
遮音性にも配慮したことから、走行中のキャビンは耳障りなロードノイズもガタピシもなく、とても快適。しかもボディがガッシリしているので、サスペンションの動きが良く感じ取れる。
そのサスペンションは適度に締まりが効いていて、ストローク初期の適度な緩さで路面の凸凹を凌ぐ。とはいっても50km/h前後の速度域ではスポーツモデルだと言いたげに路面状況をつぶさに伝えてくる。
最初は想像していたよりも硬いと感じたけれども、走り込むうちにその印象は薄れ、逆にタイヤのグリップ感を直に感じ取れることに感心。タイプRのようなハードサスペンションではないのに、このダイレクトなフィーリングは好印象だ。
それもこれもボディ剛性が大きく貢献している。そして何よりもコーナリング。とにかくコーナリングの限界速度が高い。コーナーでいじめてみたが、バンプストッピングラバーにいつの間にかタッチして、大してロールもせずにイン側のタイヤグリップも有効に使ってコーナリング。
その速度がとても高く、ターンインからエグジットまで修正を必要としない、狙いすましたステアリングワーク。不必要なくらいステアリングを切り込んでフロントタイヤをこじっても、アンダーステアはじわじわと発生。さらにリアタイヤのグリップが高く、限界域でも安定したコーナリングを見せてくれる。
このままタイプRが出てきたら、どれほどのコーナリングを見せるのだろう! そんなことを予感させる新型シビック6MTの試乗だった。電動具を伴わない純エンジンと6速MT。今後希少であることは間違いなく、そこには最近のスポーツモデルが忘れかけているクルマ本来の操る楽しみが植えつけられていた。
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