日本車なのに日本の道に合ってない! クルマの全幅は何mm以上が運転しにくいのか?

日本車なのに日本の道に合ってない! クルマの全幅は何mm以上が運転しにくいのか?

 いつから日本の道に合っていない全幅のクルマが出てきたのだろうか? 50代以上のおじさん世代から「昔から庶民は5ナンバー枠。税金が高くなる3ナンバーはたいていの人は避けてきた」という声が聞こえてきそうだが、今ではコンパクトカーやミニバン以外は5ナンバー車(2000㏄以下、全長4700mm以下、全幅1700mm以下、全高2000mm以下)は少なくなった。日本の道路は拡幅されていないのに、クルマは大きくなるばかり……。

 ミドルクラスのクルマさえ、都内の機械式駐車場に入る全幅1800mmがボーダーラインとされてきたのに、それも今では当たり前のように突破されつつある。

 いったい全体、いつからこんなに日本の道に合わないクルマばかり登場するようになったのか? そして今、改めて、クルマの全幅にスポットを当て、運転しにくいと感じる全幅は何mm以上なのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、日産、ホンダ、SUBARU

【画像ギャラリー】日本車も全幅ブクブク?道路事情と葛藤しながら頑張っている最新のクルマたち


■もはや市場規模の小さい日本市場に合わせることは悲しいかな、少なくなったのか?

今月発表・発売の「カローラクロス」。日本仕様のカローラシリーズで初の全幅1800mmを超え、1825㎜に達する。それでもグローバルでみれば「並」の広さとなる
今月発表・発売の「カローラクロス」。日本仕様のカローラシリーズで初の全幅1800mmを超え、1825㎜に達する。それでもグローバルでみれば「並」の広さとなる
カローラクロスのインパネ。デザインはカローラシリーズ共通のもの。全幅はシリーズの中でも最大ながら、見晴らしの良さで車両感覚を掴みやすくし、運転しやすさを訴求している
カローラクロスのインパネ。デザインはカローラシリーズ共通のもの。全幅はシリーズの中でも最大ながら、見晴らしの良さで車両感覚を掴みやすくし、運転しやすさを訴求している

 2021年9月に、トヨタから新型SUVのカローラクロスが登場した。エンジンやプラットフォームは、文字通りカローラのセダン/ツーリング/スポーツ、C-HRなどと共通で、ホイールベースも2640mmだから等しい。

 しかし全幅は異なる。従来のカローラシリーズやC-HRは1800mm以下に抑えたが、カローラクロスは1825mmとワイドだ。

 C-HRが1795mmでカローラクロスは1825mmなら、わずか30mmの違いだ。誤差の範囲にも思えるが、全幅の30mmは、意外なほど車幅の感覚や取りまわし性に影響を与える。

日本仕様のカローラセダン。カローラスポーツはグローバルカローラと共通の全幅(1790mm) だが、セダンとツーリング(ワゴン)は市中の取り回しを考慮し、1745mmに狭められている
日本仕様のカローラセダン。カローラスポーツはグローバルカローラと共通の全幅(1790mm) だが、セダンとツーリング(ワゴン)は市中の取り回しを考慮し、1745mmに狭められている
C-HRもカローラと共通のプラットフォームであり、全幅は1790mmとなる。デザインを優先しスペシャリティ性の高いフォルムだ。ただその分視界に制約はあり、車幅感覚は掴みづらい
C-HRもカローラと共通のプラットフォームであり、全幅は1790mmとなる。デザインを優先しスペシャリティ性の高いフォルムだ。ただその分視界に制約はあり、車幅感覚は掴みづらい

 街中を走る時、全幅が1700mm以下の5ナンバー車は、とても運転しやすい。自分の肩幅が車両の全幅と同化したように感じられ、スポーティドライブとは異なる取りまわし性の「人馬一体」を味わえる。

 例えば道幅の狭い一方通行の道路で、左側に歩行者、右側に電信柱があるような状態でも、不安を感じることなく運転できる。

 しかし全幅が1700mmを超えて3ナンバー車になると、車両と同化した感覚が少し薄れる。全幅が拡大するほど、取りまわし性の「人馬一体」が薄れていく。そして全幅が1800mmを超えると、車両との一体感が一層希薄になって運転にも不安が生じる。

11代目カローラアクシオ。日本での小型車枠を超えないように、プラットフォームをヴィッツベースに降格させてまで、全幅を1695mmにこだわったモデルだ。現行カローラと併売中だ
11代目カローラアクシオ。日本での小型車枠を超えないように、プラットフォームをヴィッツベースに降格させてまで、全幅を1695mmにこだわったモデルだ。現行カローラと併売中だ

歴代カローラのボディサイズ
■初代、1966年/全長3845×全幅1485×全高1380mm
■2代目、1970年/全長3995×全幅1505×全高1375mm
■3代目、1974年/全長3995×全幅1570×全高1375mm
■4代目、1979年/全長4050×全幅1610×全高1385mm
■5代目、1983年/全長4135×全高1635×全高1385mm
■6代目、1987年/全長4195×全幅1655×全高1365mm
■7代目、1991年/全長4270×全幅1685×全高1380mm
■8代目、1995年/全長4285×全幅1690×全高1385mm
■9代目、2000年/全長4365×全幅1695 ×全高1470mm
■10代目、2006年/全長4410×全幅1695×1460mm(日本仕様カローラアクシオ)。米国仕様のカローラセダンは全長4540×全幅1760×全高1465mm
■11代目、2013年/全長4360×全幅1695×1460mm(日本仕様カローラアクシオ)。欧州仕様は全長4640×全幅1780×全高1460mm
■12代目、2018年/全長4375×全幅1790×1460mm(カローラスポーツ)、中国仕様のカローラセダンは全長4640×全幅1780×全高1435mm

次ページは : ■全幅が違うと、運転するとどのように車幅感覚が違ってくるのか?

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