「シーウォークティー」は高齢者の脚となるか
シーウォークティーは、3輪(前1輪、後2輪)のボードの上にハンドルとなるレバーが直立し、ハンドルのスイッチを押すことにより最高時速6kmで走ることができる。それでも速すぎると感じれば、速度を制限させる調節ができる。
歩行者と一緒に並んで走れる性能を基本としている。また、人が歩くときのように、人の体の幅に収まる寸法でつくられている。立ち乗りするための床は、15cmの高さに抑えられ、高齢者でも乗り降りしやすいように考えられている。
安全装備として、前の人や障害物の検知機能を備える。検知すると警告し、時速2kmまで自動減速する。一充電走行距離は14kmで、リチウムイオンバッテリーは脱着式となっており、100Vで充電する。今後は、座り乗りや、車椅子と連結して使う方式も検討されている。
試乗した印象は、唐突さがなく多くの人がすぐ慣れて利用できるだろうと思える性能になっていた。バイクや自転車のような棒ハンドルを操作して旋回する際には、操舵角に応じて減速する機能を備え、転倒などに対する安全にも配慮がある。トヨタらしく、全体的に調和のとれた仕上がりだ。
高齢者の利用も視野に入れているとのことだが、筋力が衰える傾向にある高齢者にとって、たとえば旋回時の減速の仕方がなお強めの印象があり、ハンドルを持っていても体が旋回に追いつけないのではないかとの懸念が残る。
若い設計者には想像もつかないことだろうが、高齢者は体力が千差万別であり、筋力や反射神経は想像以上に年々劣っていく。本人が自覚する以上に、平衡感覚を保ちにくい体になっている。歩くのが苦手、あるいは長距離を歩くのが難しい高齢者に移動の自由をもたらすとの志は感じるが、現実の高齢者の体力や反射神経といった点の検証がまだ不充分のようだ。
自分でクルマを運転して移動する以外の選択肢として、2輪のバイクや自転車、そして自分の足で歩く、あるいは家族などの運転やタクシーなどに乗せてもらうといった従来のほかの試みが、シーポッドでありシーウォークティーだ。自動車メーカーとして、そうした選択肢を現物で提供する姿勢は、事業拡大の一つとなるだろう。
いっぽう、それぞれの乗物を具体的にどのような場面で、誰が使うのかといった検証は、これからの課題であると感じた。もちろん、物がなければ具体像を描きにくいかもしれないが、商品企画の時点で具体的な利用事例をもっと詰めて販売すれば、さらに話題を呼ぶのではないかと思う。
超小型モビリティは将来のインフラになるのか
たとえば、超小型モビリティのシーポッドは、都市高速道路が整備された大都市部では、自動車専用道路に乗れない点で不便を覚えるのではないか。比較的近距離でも、都市高速が整備された地域では時間の節約など含め利用するのが一般的だ。
2022年予定される日産と三菱自の軽EVが出てくれば、補助金などを活用して200万円ほどで購入できると想定されている。シーポッドは、補助金を活用して150万円ほどとなるので、都市高速を利用できないばかりか、走行中の車内騒音などの点で割高感は否めない。
では、地方都市での利用はどうであろう。そこは、軽自動車が移動を支える地域だ。そこではハイトワゴンやスーパーハイトワゴンが人気の中心ではないか。
高齢者などが一人で移動するうえで期待されるのは運転支援装置であり、シーポッドもサポカー対象車ではあるが、このさき中古車で運転支援装置を装備する選択肢が現われれば、そちらに顧客を奪われないだろうか。また、後付けの装置などもすでに販売されている。ほかにも、USBの接続がなければ、若い世代にはそれだけで関心を失わせる。
シーウォークティーも、具体的な使用場面を思い浮かべにくい印象がある。空港の屋内や、ショッピングモールなどでの利用を例として示してはいるが、それぞれに荷物を持つ可能性があり、どう対処するのか見えにくい。
警備や保安員が使う想定であれば、緊急時には走るくらいに急ぐ必要がでるのではないか。いまは自転車や徒歩による守衛所と休憩室との往復などには便利かもしれない。高齢者については、すでに述べている。
開発者たちの、自分だったらこう使いたいという個人の思いが見えてこないのが、そうした利用例を思い浮かべにくい背景にあるのではないか。大量生産による最大公約数的な形態での新車企画では、新しい移動手段の具体化が難しい気がする。
国内は、大都市と地方都市で交通形態の違いが大きく、商品性の具体化を難しくするだろう。つまり大量生産を前提とした事業には向かないということだ。地方都市や郊外で便利であっても、そこは過疎が進み拡販が難しい。
超小型モビリティの研究は、トヨタのほかに日産やホンダなども行ってきたが、実現したのはシーポッドのみだ。他社が踏み出さないのは、国内では市場の需要を読み切れないからではないだろうか。
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