■マツダ初のPHEVはまるでロードスターのような走り!!
続いてPHEVモデルのAWDに試乗。141kW(191ps)/6000rpm、261Nm(26.6kgm)/4000rpmを発揮するレギュラーガソリン仕様の2.5L 直列4気筒ガソリンエンジンに、水冷式の薄型高出力モーター129kW(175ps)/270Nm(27.6kgm)を組み合わせた。8速ATはギヤ比こそ異なるもののディーゼルと同じ1モーター2クラッチだ。
エンジン+モーターシステムの最大出力は241kW(327ps)/6000rpm、最大トルクは500Nm(51.0kgm)/4000rpm。2次バッテリー容量は17.8kWh。マツダのBEVである「MX-30 EV」のハーフ容量版を用いた。注目の0~100km/h加速は5.8秒(ディーゼルは7.3秒)と劇速SUVのトヨタ「RAV4 PHV」を0.2秒上回るパフォーマンスを披露する。
ちなみに三菱「アウトランダーPHEV」は前後モーター合算値で185kW(252ps)/450Nm(45.9kgm)、RAV4 PHVは225kW(306ps)/391Nm(39.9kgm)だ(RAV4 PHVのシステム最大トルクは未発表のため前後モーターの合算値で概算)。
全開加速はこの上なく速い。とくに2000rpmあたりまでの体感加速力はディーゼルモデルを大きく上回る。車両重量は2005kgとディーゼルよりも大人2名分重いが、電動モーターの強みを活かしググッと4つのタイヤで車体が押し出されるからだ。
音もいい! PHEVでもディーゼルモデルと同じく”聴かせる音”の作り込みがなされた。
2.5Lガソリンエンジンは現状のSKYACTIV-Gをベースに大幅に手を加え縦置き化したもの。4000rpmあたりからの甲高く澄んだ音域は横置きタイプにはなかった。作り込みの素晴らしさとともに、最初に活用/流用方法を考えてビス1本の設計から入るマツダが得意とする「MBD/モデルベース開発」の深淵をみた。
試乗は、市街地を模したゆっくりコースと、サーキットでの激走コースの緩急2種類。サーキットでは、大小パイロンで走行ラインを指定して、カーブ途中からあえてステアリングを大きく切り込むといった、実際の交通環境ではよくあるシーンが設けられた。目的は、「エンジン縦置き方式」と「後輪駆動ベースAWD」の共演を深く体感するためだ。
サスペンション形式はディーゼル/PHEVともに、前/ダブルウイッシュボーン式、後/5本のリンクを使用するフルマルチリンク式。乗り心地に角がなくしっかり減衰し、コーナリング時の限界性能も高く、切り足すステアリング操作にも反応し続ける。
限界性能がつかみやすく、ハーフウエット路面でもタイヤとの対話が成り立つのでかなりの無理が利く。ロードスターから搭載が始まったKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール/運動学に基づいた車両姿勢の制御技術)の効果も高い。
そして無理の先にはオーバーステア傾向をやんわり示すあたり、FRベースだな~と実感。そこからじんわりアクセルを踏み足せば、前輪でグッと引っ張りあげる。この冬、女神湖の氷上コースで乗ったGT-R のアテーサE-TSみたいだ。
CX-60専用コンパウンド配合のブリヂストン「アレンザ001(235/50R20)」による縦横方向の恵まれたグリップ力にもよるが、やはりサスペンションに対する考え方がこれまでのマツダから一歩進んでいる。同じAWDでもCX-5にはなかった挙動だ。大きくて重いけど、小さくて軽いクルマみたいに素直で楽しい。
試乗後、開発陣(お馴染み・虫谷泰典氏)にサスジオメトリーの考え方を伺って納得。いわく、「ND型ロードスターと考え方は同じです」。わずかな運転操作であっても、重さや軽さ、動かしやすさや、にくさなどを、挙動でドライバーにフィードバックしてくれる。2トンのCX-60が1トンのロードスターと同じとは、にわかには信じられないだろうが、乗ってみると手の内感みたいなものは明らかに同一。ND型を愛車にする筆者が言うのだから間違いない。
日本市場には、今回のディーゼル/PHEVのほかに、ディーゼルではマイルドハイブリッドシステムのないモデルが、ガソリンではプラグインハイブリッドシステムのないモデルが、それぞれ純粋な内燃機関モデルとして用意される。また追加のバリエーションとして、直列6気筒3.0LのSKYACTIV-Xと、直6ガソリンターボ&NAもあるようだ。
直6ターボは残念ながら(CX-60としては)日本に導入されないか? 価格は噂ほど高価ではなく、CX-5とオーバーラップするらしい。最もトップモデルはそれなりだろうが、マツダ各モデルは中間グレードのお買い得感が半端ない。今から発売が待ち遠しい!
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