トヨタセンチュリーvs.ロールスロイス 世界最高峰を水野和敏が斬る!!

■センチュリーはよくぞここまで仕上げてきた

【センチュリー】

走り出すと圧倒的なスムーズさに驚かされました。ステアリング操作はまったくフリクションを感じませんし、操作に対する遅れや左右差もありません。

操舵力の軽さもほどよく、サスペンションもしなやかに動いていてとても滑らかな走行感ですし、走行音がまったく室内に入ってきません。

エンジン音はもちろんのこと、タイヤから発するパターンノイズも皆無だし、サスペンションを伝わって入り込んでくるロードノイズもキッチリと抑え込まれています。

ただ、ブレーキはちょっと初期のタッチがよくないです。ペダルを軽く踏み込んだ時の初期応答が弱い。でも、踏み込めばしっかりと効きますから、許容範囲です。ブレーキの前後バランスはいい配分です。

このクルマは運転手さんがとてもラクでしょうね。東京〜大阪の日帰りでも疲れません。とても乗りやすいクルマで、よくぞここまで仕上げてきたな、と思います。

大きさをまったく感じません。運転しているとクラウンと同じ程度のサイズに感じます。タイヤも静かだしロードホールディングもいい。これは時間をかけて丁寧に仕上げた合わせ込みです。

メイドインジャパンのもの造りのよさが感じられます。2000万円を切る価格だったら充分に納得のコストパフォーマンスです。山道を走らせても大きさや重さは感じません。前後の動きのバランスもよく、スイスイ走ることができます。

水野氏も「よくぞここまで仕上げてきた」と褒めるセンチュリーの走行性能。皇族も使用する車種だけに開発にも相当の力が入っている

ニュルを走って開発はしていないでしょうが、相当実際の道路を走り込んで仕上げていますね。

引き続き後席での評価をしましょう。

走り出すと、前席では感じなかった小さなプルプルとした振動を若干感じます。シートは素晴らしくいい。

表面のグリップがいいためブレーキングやコーナリングで身体がずれることはありません。リラックスした姿勢で快適な移動ができます。

ヘタなスポーツモデルのバケットシートよりもホールド性が高いほど。クルマの前後バランスがいいため後席でも身体が揺さぶられません。これは素晴らしいクルマに仕上げられています。

【ロールスロイスファントム】

ステアリングホイールは細身なのがロールス流。そして操舵力はとても軽いです。これが伝統なのですが、操舵感や反力感などはセンチュリーのほうがいいです。

軽すぎて反力感が小さいため、ちょっと動きに慣れが必要です。コーナリングでステアを切り込んでいくと、ある地点からクッとノーズが勝手に切れ増ししていく動きをします。

これはブッシュがソフトでサスペンションジオメトリーが変化してしまうためでしょう。しかし2.7トンの車重に全幅2mを超える大きく重たい車体を考えると、そのサイズ感は感じません。

ニュルを走り込んで仕上げている成果です。コーナリングでもちゃんと内輪が接地しています。

破綻はいっさいありません。ブレーキはセンチュリーと同じく、ペダルを踏んだ最初の効きに一瞬甘さを感じましたが、踏み込んでいけば踏力に応じて制動力が増しますし、ペダルタッチの剛性は高くコントロール性もいいです。

ニュルを走りこんでいるロールスロイスファントム。箱根のワインディングでもその真価を発揮した

意外と、少しですが路面のゴツゴツ感を拾います。これは先ほども説明したように、防御仕様などでの重量増加に対応するため、XL(エクストラロード)規格の超高負荷タイヤを使っていることが要因です。

全長は6mにも迫る長さにもかかわらず、意外なまでに小回り性能が高いことに驚きです。室内に入る音は、センチュリーがあまりにも徹底的に抑え込まれているため、比較するとロールスのほうが少し大きく感じますが、絶対値としてはとても静かです。

エンジンはV12の5.7Lツインターボですが、ターボを感じさせないアクセルレスポンスと強烈なトルクです。超大排気量の自然吸気エンジンのようなフィーリングです。
さて続いて後席です。

シートベルトの素材がしなやかで服を身に着ける感触。シートはやはり滑らずしっかりと身体を支えてくれます。

箱根の山道でもシートに身体を預けてリラックスして乗っていられる。後席に座っていると、ボディのガッチリ感を実感でき、これが圧倒的な安心感に繫がってきます。これがロールスです。

次ページは : ■取材を終えての総評 最終的な評価はいかに?

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