■後席に乗るVIPのことを徹底的に考えたファントム
ちょっと視点を変えてみましょう。
センチュリーのブレーキはほかのトヨタ車とは違う思想でしっかりとした大径ローターに大きなキャリパーで作られています。2トンを超える車重に見合ったブレーキだと思います。クラウンやレクサスLSよりもブレーキ容量は適正です。
前席ドアを開けるとセンチュリーはちょっと重すぎます。チェックリンクが強すぎます。ファントムのほうがドアパネル自体の面積は大きく重たいはずなのですが動きは軽やか。
どちらも前席は基本的に運転手が乗ります。クルマを停めたらサッと降りて素早く後席ドアを開けに行かなくてはなりません。大切なのは後席に座るオーナーやゲストです。
ファントムの後席ドアが後ヒンジで観音開きなのは理にかなっていて、運転手、あるいは助手席の執事が降りてサッと前側から後席のドアを開けることができます。
動きがスムーズでスマートです。後席にロングドレスのご婦人やミニスカートのお嬢様が乗ることもあるでしょう。
ファントムの前開きリアドアだと足を揃えてスッと上品にさり気なく乗り降りできますが、センチュリーの後開きのドアだと足を開いて降りなければならずエレガントではありません。
ファントムのルーフの高さ、座面の高さも上品な仕草での乗り降りのためなのです。
今回のファントムはレザーシートですが前後席ともに適度なゆとりを持たせた張り方に加え、ほどよく滑り止めの効いた表面処理になっており、スッと身体が包み込まれるような姿勢となり、走行中も身体に力を入れることなく、リクライニングさせてリラックスできます。
センチュリーの起毛させたファブリックシートも滑らずに身体をホールドしてくれていいのですが、ちょっとグリップが強すぎて乗り降りの際にスカートの裾の引っ掛かりに気を使う必要もあります。
またファントムのCピラーの位置と形状も絶妙です。寝ている顔は外から見られず、見送る人との挨拶は自然にできます。センチュリーの位置と形状ではリクライニングを使って寝ている顔は信号待ちで外から丸見えです。
足元スペースは、特にロングホイールベース仕様のファントムは余裕があるだけでなく、パレスの床のような雰囲気まであります。前席のシートレールはメッキパーツでカバーされており、このあたりの造りはさすがです。
フロントフードを開けると、ファントムはBMWのボディ構造と基本的には同じで、二重隔壁を使ったガッチリした構造。
アルミ製サスペンションアッパー部はダッシュパネルと結合する高剛性構造となっており、とてもしっかりとした作りです。トヨタは先日乗ったクラウンでもそうでしたが、ここが分断されていて効果的に剛性を高められていないのが残念です。
トランクは、センチュリーはハイブリッドでバッテリーを搭載しているにもかかわらず充分な広さを確保しています。
ところでVIPカーにおいてトランクとはいったいどのようなものだと思いますか!? 日本ではゴルフバッグがいくつ積めるかとか言われますが、欧米のVIPカーは「衣装ケース」なのです。
その他の荷物は別のクルマで運ぶのですが、シーンにあわせた何種類もの高級な衣装は身の近くに置きたい。衣装用のトランクを積むためにクルマのトランクは傷を付けないようなカーペットで覆われていなければなりません。
こうしたVIPカーは運転してどうだ!? というものではありませんが、まあ一通り走らせてみましょう。
コメント
コメントの使い方ロールスロイスの全長が5090となっていますが5990ではないでしょうか?