2/走りはどう変わったのか?
エンジンは変わらずV6ガソリンツインターボのVR38DETTです。排気量は3799cc、最高出力は570ps、最大トルクは65.0kgmと、従来から数値の変更はありません。アクセルペダルを踏み込むことを、つい躊躇ってしまうほどの加速力は健在です。
大きな変更点の一つがタービンの効率向上です。この2020年モデルには、これまでNISMOには採用されていた、レスポンスの向上に貢献するターボ高効率化技術(アブレダブルシール)を採用しています。
アブレダブルシールとは、ターボハウジングに樹脂を射出することで、シール機能を持たせた構造です。吸入した空気の漏れを最小限にし、最適なクリアランスを維持することで、過給レスポンスをよりいっそう向上させています
そして、ミッション制御の「Rモード」を改良、加速時のギアのつながるタイミングを鋭く、よりアグレッシブに変更されています。
2020年モデルでは、TCU(トランスミッション コントロール ユニット)ソフトウェアを新たに設定し、コーナー進入前のブレーキングで積極的に低いギア段を選択し、より鋭いコーナー進入(旋回減速時のアンダーステア低減)と、より鋭いコーナー加速を実現しています。
タイムを0.1秒刻むための技術が入っていると考えると、レギュラーモデルとしても、いまだ速さを諦めていないスタンスが伝わります。
サスペンションに関しては、2020年モデルではバネ下の軽量化(ロードホイールの軽量代は2017年モデルに対し-140g/台で過去最軽量)に合わせたサスペンションセッティングのリファインとともに、いっそうのロードホールディング向上に貢献し、より“よく動く足”にしたそう。
しかも、ロードホイール剛性は維持したため、ネガとなりうる音振性能も両立する設計がなされています。
3/試乗してわかったGT-Rのココが凄い ココがダメ
このクルマの凄さは、「心臓を持っていかれるほどの強烈な加速」にあります。しかし、こんな「暴れ馬」にもかかわらず、タービン効率を改善した効果かアクセル操作も扱いやすくなっているようです。
また、セミスリックのような強力なグリップのタイヤによって軽々とコーナーを旋回し、かつブレーキ踏力は軽く、操舵力も適度に感じます。
「アクセルを踏み込まなければ」簡単に操作できるのが、最大の魅力です。このGT-Rのアクセルを踏み抜けるのは、プロドライバーやきちんとした運転訓練を受けた「猛者」だけでしょう。
ただし、2017年モデルから大きく改善したとはいえ、この「絶対的な速さ」と引き換えに「快適性」が犠牲になっています。
絶え間なく車内に入り込んでくる高周波のロードノイズが、1200万円を超える高額車としての許容レベルを超えていると、筆者は感じます。
インテリアの質感が上がっているのに、音振性能が不十分なことで、「動的質感」を感じられないのです。
なお、電子制御機能付ショックアブソーバーの「コンフォートモード」にすれば、ボディモーションを許容してショックを和らげてくれますが、元々バウンド側のサスペンションストロークがそれほど確保されていないので、それでも足が固めの一般車のレベル。
しかも減衰力制御では、前後方向のショックはいなしきれず、20インチの高剛性のタイヤ縦バネが悪さをしています。
そのため、高速道路などの路面突起では、「ガツッ」という前後のショックと、大き目の乗り越し音がドライバーを襲い、「快適に移動する」とはどうしても言えないのです。
「ポルシェ911もロードノイズは同じようなレベルなのだからいいじゃないか」という理屈もありますが、「12年目のスーパーマルチパフォーマンスカー」です。音振性能をないがしろにしていい理由にはならないと思います。
ただし、ポルシェの新型911カレラ4Sが1772万円に対し、GT-R 2020年モデルの1210万円という価格は、依然としてコスパがよく、ブランドを選ばないのであれば、GT-Rのほうが圧倒的におススメといえます。
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