幹線輸送は自動運転トラックが担う!? 米TuSimpleが東名高速で行なう実証実験車両を初披露

幹線輸送は自動運転トラックが担う!? 米TuSimpleが東名高速で行なう実証実験車両を初披露

 米国カリフォルニア州サンディエゴに本社を構える「TuSimple」(TuSimple Holdings, Inc. )は、米国・欧州・中国そして日本で商用トラックの自動運転技術を開発し、同技術を輸送サービスとして提供するビジネスモデルを目指す企業。

 その日本法人「TuSimple JAPAN」が今年初頭から東名高速・新東名高速で実証実験を行なっているレベル4自動運転トラックがこのほど報道関係者に公開された。日本ではまだ馴染みが薄いTuSimpleだが、あらためて同社の取り組みを紹介していこう。

文/フルロード編集部、写真/フルロード編集部・TuSimple JAPAN

自動運転トラックのリーディングカンパニー!? TuSimpleとは?

米国で走行するTuSimpleの自動運転トラック
米国で走行するTuSimpleの自動運転トラック

 TuSimpleは2015年9月に米国・中国で同時に設立された中国系のグローバル企業。北米では大手物流会社20社近くに自動運転輸送サービスを提供し、現在全世界では60台近くのレベル4(条件付き)自動運転トラックの運行を行なっている。

 また2020年にはZFと無人自動運転システム開発に着手し、翌2021年には米国で世界初のレベル5(条件なし)自動運転大型トラックによる物流施設構内・一般道・高速道路を含めた全長約130kmの完全無人走行に成功した。

 さらに、同年、ハイテク・IT関連企業や新興企業が多く名を連ねる米ナスダック市場に自動運転技術の企業として初めて上場を果たすなど、その道の分野で広く名を知られるところとなった。

TuSimpleの死角を無くすセンシング技術のイメージ
TuSimpleの死角を無くすセンシング技術のイメージ

 同社の強みの1つとしてあるのが設計のベースとなる「マルチセンサーフュージョンシステム」と呼ばれる独自開発のセンシング技術で、LiDARやカメラセンサーを組み合わせて車両の周囲360°を認識するシステムである。

 複数のセンサーを組み合わせることで、夜間やトンネルといった光量の少ないシーンや風雨等の天候に左右されず安全に運行できることに加え、前方はカメラとAI技術の融合によって最大1000メートル先まで認識しており、余裕のあるシステムのプランニング制御を可能としている。

レベル4自動運転技術を搭載した「日野プロフィア」

日野プロフィアをベースに開発した自動運転トラック
日野プロフィアをベースに開発した自動運転トラック

 いっぽう、日本での活動は2017年に「TuSimple JAPAN」が設立され、自動運転トラックおよびその商業化の研究を開始した。その代表取締役は中国人で日本に留学経験もあるナン・ウー氏が務める。

 同社が本格的な参入を発表したのは2023年6月からだが、2022年には日本の大型トラックへ自動運転システムの実装を行ない、テストコースで安全検証を完了。

 翌2023年1月より、高速道路における自動運転技術の確立を目指し、レベル4自動運転技術を搭載した大型トラックを使った実証実験を東名高速・新東名高速で開始した。

 この実証実験は今も継続されており、2023年10月までに東京~名古屋間約300kmの実験が完了予定。その後、実装規模を拡大し路線を大阪(新名神)まで延長した実証実験が見込まれている。

 用いられる実験車両は、「日野プロフィア」AMTの単車がベース。海外ではトラクタ+トレーラに自動運転技術を搭載しているが、日本では一般的な単車のウイングバンボディが選択された。

 車両のセンサー類は、ルーフ上部に取り付けれれたバーにカメラが8つ、GNSSアンテナ2つ、LiDAR1つを配置。またフロントの左右コーナーパネルとバンバー部に種類の異なるLiDARを2つずつ(計6つ)、運転席・助手席それぞれのドア上部にLiDARとカメラのセット、車両後部の左右と中央に計3つのLiDARが搭載される。

 このセンサー類の情報データは、寝台部に設置された黒いボックスに収められた統合処理装置に集約され、同じくボックス内にある制御装置に司令を伝達。状況に適したステアリング・アクセル・ブレーキ制御が行なわれる。

ルーフ上部に備わったセンサー類。丸いのがカメラ、円盤状のものはGNSSのアンテナ、四角いのがLiDARだ。各種センサーがさまざまな方向の検知を行なっている
ルーフ上部に備わったセンサー類。丸いのがカメラ、円盤状のものはGNSSのアンテナ、四角いのがLiDARだ。各種センサーがさまざまな方向の検知を行なっている
黒の四角い装置はシステム起動ボタン(銀色の部分)。パソコンはオペレーターのモニター用
黒の四角い装置はシステム起動ボタン(銀色の部分)。パソコンはオペレーターのモニター用

 それ以外には、ステアリング制御用の自社製モーターや、運転席横に自動運転システムの作動スイッチや緊急停止スイッチが備わっているが、他は通常のプロフィアと変わらない。

 実際の実証実験では運転手と助手席にオペレーターが搭乗し、運転手は高速道路までの手動運転と緊急時等の対応を行ない、オペレーターは車両情報とリンクしたパソコンでモニター監視などを行なう。

 高速道路で自動運転をオンにすると運転手は基本操作にノータッチで、システムが自ら「本線合流」「障害物回避」「渋滞対応」「工事現場対応」「車線変更」などの複雑な運転シーンにも対応してくれる。

 車両は基本的に走行車線を約80km/hで走行するが、それよりも遅いクルマがいた際にはシステムが自動で判断して車線変更。追い越しをかけるといった自動走行も行なわれる。

 なお、自動運転システムは運転手が操作介入するとオーバーライドする仕組みになっており、緊急時でもすぐに手動運転に切り替えできるようになっているという。

 TuSimple JAPANが目指すのは、高速道路の近くにある物流施設と物流施設を結ぶような幹線物流の自動化だ。その第一段階として現在進めているのが、貨物量の多い三大都市圏を結ぶ東名・新東名・新名神における自動運転物流サービス網の構築である。

 今後の計画としては、前述の通り大阪(新名神)までの路線拡大に加え、自動運転トラックを増やし実運用を想定した実証実験の推進、また完全無人実験と自動運転物流サービスの実証実験も準備していくとしている。

【画像ギャラリー】TuSimple JAPANのレベル4自動運転大型トラックをギャラリーでチェック(20枚)画像ギャラリー

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