2024年はトラックドライバーの給料が上がる!? 「多重下請」の是正や「標準的運賃」引き上げを国交省検討会が提言!

平均8%の運賃引き上げ

2024年はトラックドライバーの給料が上がる!? 「多重下請」の是正や「標準的運賃」引き上げを国交省検討会が提言!
「距離制運賃表」の改定案と上昇率

 「標準的な運賃」制度では距離制運賃と時間制運賃の運賃表を定めている。改定により平均して約8%の運賃引き上げを提言している。車種別では距離制の小型・中型・大型・トレーラがそれぞれ6.8%、6.5%、9.0%、12.3%の上昇となっている。同じく時間制ではそれぞれ5.2%、5.4%、7.6%、10.2%だ。

 また、燃料価格が値上がりした分を運賃とは別に収受する「燃料サーチャージ」制度については、2023年3月に標準的な運賃制度の一部であると位置づけらたが、その基準価格が1リットルあたり120円に変更される(=120円までは運賃表の「原価」に含み、120円を超える部分をサーチャージとする)。

 トラック運送の原価で最も構成比が高いのは「人件費」で、41.4%を占めている(全日本トラック協会の報告書による)。労務費(人件費)の価格転嫁を進めなければドライバーの賃上げは不可能だが、コスト上昇による価格転嫁と比べると、ほとんど転嫁率が上昇していない。

 労務費の価格転嫁は内閣官房・公正取引委員会の指針で「根拠に基づく公表資料を用いて希望する価格については尊重すること」とされている。「標準的な運賃」は経済の実態が反映された「公表資料」の例とされ、労務費の価格転嫁に活用されることも期待される。

 トラックドライバーの労働生産性が向上しない理由として指摘されるのが、長時間の荷待ちやサービス荷役という商慣行だ。制度はこれらの対価についても標準的な水準を示している。

 30分以上の待機が発生した場合の「待機時間料」は現行制度にも示されているが、原価調査の結果を踏まえて、小型車1670円、中型車1760円、大型車1890円、トレーラ2220円とした。

 また現行制度で水準が示されていない荷役作業について、作業ごと(フォーク・クレーンを使用した荷役、手積み・手卸しなど)の「積込料・取卸料」を加算するとした。さらに荷待ち・荷役時間が合計で2時間を超える場合、安全対策などやむを得ない場合を除き、労働基準法の割増賃金(割増率5割)を加算する。

 なお、「標準的な運賃」は有料道路(高速道路)の利用を前提にしている。現行の告示では「実費として収受すべき費用の一つ」として例示されているが、新たに「有料道路利用料」として「標準運送約款」の雛形等に明記する。同約款の改正では運送と運送以外の業務を分離して荷主から対価を収受する旨も明記される予定だ。

「多重下請構造の是正」と「柔軟な運賃設定」

2024年はトラックドライバーの給料が上がる!? 「多重下請」の是正や「標準的運賃」引き上げを国交省検討会が提言!
トラック運送業の多くが下請運送を利用しており、3次以上の多重下請けも常態化している

 国交省・経産省・農水省の実態把握調査によると、トラック運送では3次以上の「多重下請」が一定程度確認されている。元請け会社(利用運送)が下請け会社(実運送)に業務委託すれば、庸車費用がかかる。荷主が標準的な運賃を支払っていても、何重にも再委託されることで実運送会社は適正な運賃を収受できない。

 標準的な運賃は実運送会社が収受すべき運賃を示したものとされる。ただ、現実には中間業者が運賃から手数料を差し引いており、多重下請を経て残る運賃は「雀の涙」ということがしばしば起こる。下請けに発注する際の手数料が考慮されていないためだ。

 今般の標準的な運賃では多重下請を是正するため、運賃から費用を差し引くのではなく、運賃とは別建てで「利用運送手数料」を収受する仕組みとすべきとした。これにより下請けが多くなるとその分の手数料がかかるため、荷主が実運送会社に直接委託するインセンティブが生じる。

 なお、運賃の10%を利用運送手数料とするイメージが示されており、運賃から差し引くのではなく上乗せして請求する旨を標準運送約款にも明示的に規定すべきとした。

 また、多重下請の弊害として運送会社は自社が何次請けなのか知らず、荷主は実運送会社がどこなのかわからないということが起こりうるため、元請け運送は実運送事業者の商号・名称等を荷主に通知すること、荷主と運送会社は運賃・料金等を示した電子書面を交付することなどを約款に明記する。

 その実効性を確保するにはさらに踏み込んだ対応が必要で、運送体制を可視化するための管理簿の整備や、契約の電子化・書面化などの法制化に向けた検討が進められている。

 トラック運送の生産性向上には、積載率を上げるための取り組みも重要だ。貨物車の大半は「貸切」で、現行制度もトラックの「一両貸し」を前提としている。複数の荷主の貨物を混載する共同輸配送を推進するため、新たに「個建運賃」(重量や容積、カゴ車やパレット毎の運賃体系)を規定すべきとした。

 そのほか、通常より短い日時での運送には速達割増を適用することや、個建の積み合わせのために荷主が充分なリードタイムを確保した場合は逆に割引きするなど、柔軟な運賃設定を提言している。ただし、リードタイムが長いと有料道路の利用を認めないなど長時間運転を助長する恐れもあることから、運転時間を考慮した割増運賃を設定する。

 特殊車両の割増対象は現行では冷蔵・冷凍車のみだが、海コントレーラ、セメントバルク車、ダンプ、コンクリートミキサ、タンクローリなどの割増率も告示上に明示する方針だ。


 「働き方改革」の本来の趣旨は、トラックドライバーの労働条件を改善し、持続可能な物流を実現することだった。しかし現行の商慣行のもとでは却って「2024年問題」という危機を招いてしまった。標準的な運賃と標準運送約款の改正を通じて、実運送会社が適正な運賃を収受でき、ドライバーの確実な賃上げにつながることを期待したい。

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