山田車体工業が三菱ふそうスーパーグレートFSをベースに製作した平行スライドボディは、重機運搬車としても平ボディとしても使える汎用性の高さが持ち味。納車直後の実車をレポートした。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2024年3月発売「フルロード」第52号より
平行スライドボディとは?
今回紹介するのは、山田車体工業(静岡県沼津市)が製作した平行スライドボディだ。
平行スライドボディは、キャブバックに搭載しているクレーンのアウトリガーで車両前方をジャッキアップしたうえで、荷台を後ろにスライドさせて重機の積み降ろしを行なう荷台スライド式重機運搬車。同社が製作するのは今回が初という。
最大の特徴は、クレーン用の油圧を使って荷台のスライドを行なう点(専用の油圧が不要)。これまでは油圧のノウハウがなく製作できなかったが、2020年にグループに加入した小田切車体(秋田県大館市)のノウハウを吸収することで製作が実現したという。
導入ユーザーの大泉運輸(福島県いわき市)は、大手厨房品メーカーの製品および部品輸送を軸に、発電所で使われる石灰や木質ペレット、ダンボール製品、硫酸、鉱石、楽器などを幅広く運んでいる運送会社。
対応できるモノに関しては「何でも運ぶ」が持ち味で、近年は重機運搬車や平ボディのニーズが増えていることから、双方のニーズに対応できるような、汎用性の高い重機運搬車の導入を検討。山田車体工業の平行スライドボディ1号車に白羽の矢が立った、というわけだ。
重機運搬車にはさまざまなバリエーションが存在するが、そのなかから平行スライドボディを選んだ理由は「シャシーフレームをカットしないので強度が高い」のと、「傾斜角が緩やか」な点を評価したから。加えて、山田車体工業の丈夫で長持ちなボディづくりへの信頼もあったという。
さまざまな積み荷に対応する荷台の仕様
ベース車両は三菱ふそうスーパーグレートFS系4軸低床8×4リーフサスシャシー(GVW25トン級)で、キャブ仕様はフルキャブ/標準ルーフとなっている。
荷台を支える根太構造は荷台スライド機構を擁する平行スライドボディ専用のもので、サビ対策の為、水性防錆塗装を実施。同塗装はシャシーフレームにも施されている。床は集中荷重を分散させるため、鉄板の上にアピトン材を重ねる特殊な方式を採用する。
キャブバックに搭載されるクレーンは古河ユニック製4段ブームタイプdえ、同装置の油圧で荷台の下にあるシリンダーを押して荷台を後ろにスライドさせる。スライドストロークは最大3430mmで、傾斜角は7.2度だ。
アルミブロック製アオリは7方開で、車両からはみ出すような幅広い積み荷を運ぶこともあることから、簡単に着脱できる仕組みを採用。鉄製の骨格を持つ鳥居は背面5パネルの防水収納を備える「箪笥型」で、脚立やスコップを立てるフック、LED作業灯などを装備。
自走乗り込みができない重機や農機具の積み降ろし時に使うウインチも備える。
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