2020年9月にダイムラートラックAGが発表した燃料電池トラックのコンセプトモデル「GenH2」。大型車の電動化における課題のひとつである「ディーゼル車並みの長距離運用」を可能にするという
GenH2はアクトロスをベースとするホイールベース3.7m級の2軸セミトラクタ。架装スペースの限られる車型で航続距離を確保するには高いエネルギー密度が必然。液体水素をつくるには相応のエネルギーが必要だが、長距離輸送には現実的なアイデアのひとつだろう
フレーム左右に搭載された液体水素タンク。ステンレス製の2重構造で真空断熱され、片側40kgの容量を持つ。ガスボンベと比べて内圧が低いため重量も軽い。ただし完全な断熱は不可能なので、充填したら一定の時間内に消費する必要がある
キャブバック部にはエアタンクの一部を含めシャシー側に入りきらなかった補機が配置されている。化石燃料(軽油)のエネルギー密度の高さと扱いやすさが改めて感じられるところだ
eアクトロス・ロングホールはGenH2と同じクラスのセミトラクタながら、大量のバッテリーを搭載して500kmの航続距離を確保。休憩中の急速充電で行程を伸ばせるので充分実用的という。なお、ダイムラーは各物流拠点に充電設備を設置することで比較的低コストでネットワークが整備可能としている
実用供試を経ていよいよ登場したeアクトロスの市販モデル。航続距離はコンセプトモデルの100kmに対して倍の200kmに伸びた。ちなみに今秋発売予定の量産モデルでは大容量バッテリーと高性能モーターの組み合わせで航続距離400kmを実現している
ホイールベース間には液体水素(LH2)タンクをカバーするフェアリングを装着。FCの温度管理は内燃機関以上にシビアなので、キャブ前面のラジエタースペースはそのまま冷却装置に使われる