クルマを所有する人には、自賠責保険への加入義務があります。しかし、自賠責保険には最低限の補償しかなく、自賠責があれば安心してクルマに乗れるかと言われれば「NO」なのです。クルマを運転する人なら、今一度、任意保険との違いや意義を確認しておきたいものです。
文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(メイン画像=Ingus Evertovskis)
【画像ギャラリー】自賠責保険だけじゃだめ? 任意保険に入らないクルマが世の中を走っている恐怖(2枚)画像ギャラリー自賠責保険の本当の目的は「被害者を救うこと」
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、すべての車やバイクに加入が義務づけられた強制保険です。その目的は、交通事故の被害者を最低限救済することにあります。
ただ、補償額は決して十分とは言えません。現在の自賠責の補償限度額は、死亡事故で最高3,000万円、後遺障害は最高4,000万円(障害の等級による)、傷害事故は最高120万円です。
筆者は最近、冠水被害を伝えるニュースで、「自賠責保険では水害に対応できません」と報道されているテレビ番組を複数確認しました。自賠責保険は、自身の補償ではなく、事故相手を救済するものなのですが、皆さんに情報を伝える立場のメディアでさえ、自賠責保険の内容や目的を、正しく認識していないケースもあるということです。
実に多くの人が自賠責保険について誤解を示している可能性もあるのでしょう。
自賠責保険は、万能ではありません。これは、あくまで事故被害者救済のための保険であり、自分のクルマや生活を守るものではないのです。
冠水で車が全損したり、追突事故に巻き込まれたりした場合でも、自身の契約する自賠責保険からの補償は受けられませんから、クルマに乗る際には、任意保険への加入も必要になってきます。
任意保険未加入のクルマは4台に1台という怖さ
任意保険とは自賠責保険とは別に、ドライバーが自由に加入できる自動車保険のことです。自賠責は「人身事故の被害者」に対してしか補償されませんが、任意保険なら相手の車やモノ(対物)、自分や同乗者(人身・搭乗者)、自分の車(車両)まで幅広くカバーします。
日本損害保険協会が2024年3月末にまとめた資料によると、全国の自動車保有台数およそ8,256万台に対して、任意保険の加入状況は次の通りとなっています。
対人賠償保険の加入率は75.5%、対物賠償は75.6%で、車両保険は47.2%です。人身(実損補償)は71.2%と比較的高めですが、それでもすべてのクルマに備わっているわけではないというのが現状。任意保険未加入のクルマは4台に1台もあるということです。
筆者は以前、任意保険未加入のクルマに追突された事故を担当した事があります。加害者は任意保険未加入で、ケガへの補償は被害者が加入している人身傷害保険で対応しました。しかし、クルマの修理費は被害者も車両保険に未加入であったため保険での補償はできず。
当事者同士での交渉が続きましたが、最終的に加害側と音信不通となり結果、被害者は自腹で修理代金を支払うしかありませんでした。
こうした事例は決して珍しくなく、統計で示される任意保険未加入のクルマは4台に1台という数字が、恐怖の現実であることを痛感させられます。事故のリスクは加害者側と被害者側の両方を意識して初めて現実的なものとなるのです。
クルマを運転する限り、任意保険の加入、未加入でリスクの大きさは変わります。そして相手を守ることが結果的に自分を守ることにもつながるということになるのです。
これを理解したうえで被害者・加害者お互いの安全と安心を支える仕組みを整えていきましょう。




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