プロ・サクの使われ方
下村さんによると、マイチェン前のモデルが企画された2000年前後に対して、現在のプロ・サクの使用環境は少なからず変化があるという。端的にいえば、以前がほぼ最大積載量を積んでの短距離移動を念頭に置いていたのに対して、現在は流通体系の変化により、4ナンバーバンには小口の長距離輸送能力が重視されるようになった。
それを裏付けるのが直近の顧客調査で、おおむね100㎏の積載荷重で5年間・10万㎞程度乗られたところでリースアップによる代替というのが、平均的なプロ・サクの使われ方だという。
「もちろんそれは平均値ですから、我々としてはおおむね20万㎞くらいまでの耐久性や、最大積載量での操安性は必ず担保します。いっぽうで使われ方の変化を考えた時、長時間を車内で過ごす上での快適性はしっかり高めないとならない。音振に関しては新しいパワー&ドライブトレーンの貢献も大きいです」
ちなみにプロ・サクの場合、法人需要が9割を超えていて、その大半がリース販売となる。それゆえ定期点検もしっかり行われており、車両の全般的な使用環境は傍から想像するより悪くはないそうだ。
「法人さんの場合、価格や維持費に並び、昨今はコンプライアンス的にも安全にまつわる要望が非常に強くなっています。そして乗る人にとっては疲れず運転しやすいということも重要な安全性能です。プロ・サクは運転して楽しいことを目指してはいません。でも、運転が楽であることは可能なかぎり心がけました」
北海道は士別にあるトヨタの広大なテストコースで、開発車両をあらゆる状況で1日中走らせてみても疲れない。それがすなわちクルマを、運転を飽きさせないことである。開発時にはそれを確認しましたという下村さんだが、実は内装側にも確かめたことが幾つもあるという。
ユーザーありきの設計
「ドライバーの利便を高めることが快適性や疲れなさに繋がるという観点でいえば、インパネ周りはまずこちらの叶えてもらいたい機能をすべて設計側で盛り込んでもらい、後でデザイナーに意匠をまとめてもらいました。
弁当の乗るテーブルや1Lの紙パックが入るホルダーが注目されましたが、例えばコンビニフックの位置は吉野家の牛丼を持ち帰る際、3つ重ねが安定して下げられるようにしています。
また、機種の形状がどんどん変わる電話のホルダーは後々交換できるようにしました。あと、シートも仮眠を考慮して背もたれをほぼ水平に倒せるようにしたり……と、それらは乗られる方々の要望を洗い出し、できるかぎり反映した結果です」
楽しいや面白いということにまつわる我は抑え、とにかく万人が乗りやすく使いやすいことに持てるスキルを注ぎ込む。下村さんの話を聞いていると、その地道な仕事ぶりがとてもよくわかる。
そうやって、プロがプロに徹するがゆえに成り立っているのがプロ・サク、ひいてはトヨタの商用車なのだろう。4ナンバーをして、トヨタのFFコンパクトにおいて最も素直なドライバビリティを持つクルマに仕上がっているのは偶然ではなく、必然というわけである。
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