コロナ禍にあっても国内の販売好調が続くメルセデス・ベンツ。新型コロナウイルスの影響を受けた今年1月からの販売動向において、車名別輸入車新規登録台数の統計(日本自動車輸入組合・JAIA)によれば、11月単月の占有率は17.18%に上る。
2020年10月5日、そんな人気のメルセデス・ベンツから中核モデルであるEクラスのクーペとカブリオレがマイナーチェンジされた(日本仕様)。9月のセダン・ステーションワゴン・オールテレインにつづく形でのモデルチェンジ。どのように変わったのか? 自動車評論家の岡本幸一郎氏が試乗する。
●メルセデス・ベンツEクラス マイナーチェンジのポイント(公式サイトより)
・エクステリアデザインをシャープでダイナミックな印象に一新
・メルセデス・ベンツの新世代ステアリングホイールを採用
・対話型インフォテインメントシステム「MBUX」にARナビゲーションを採用
・メルセデス・ベンツ最新の安全運転支援システムを搭載
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※本稿は2020年11月のものです。試乗日:10月27日
文/岡本幸一郎、写真/Mercedes-Benz、ベストカー編集部、撮影/奥隅圭之
初出:『ベストカー』 2020年12月10日号
■Cクラスとの差はより大きくなり、上級・上質に進化
2016年に現行型が登場した時、それまでは独自路線のデザインだったEクラスがCクラスとソックリになったことには驚いた。
とはいえサイズだけでなく、乗るとやっぱり車格が上という感じは重々に伝わってきた。
新型はそこをもっと差をつけようとした印象で、見た目の変化は小さいようで小さくない。特にヘッドライトの変更だけでなくリアコンビランプが横長になったセダンはグンと上級イメージが高まった。
AMGラインエクステリアが標準装備となり、末広がりのグリル形状とされた「スポーツ」は、非常に凝ったデザインのホイールも印象的だ。
インテリアでは斬新なデザインの3本ツインスポークのステアリングが与えられる。
今回ドライブしたのは、4ドア車のE200と2ドア車のE300で、走りに関する変更は特に伝えられていないが、心なしか全体的に乗り味がよりまろやかになり、一体感が増して、ノイズや振動が低減したように感じられた。
そのうえで、ワゴンは積載状態にも対応すべく足まわりが強化されていたり、クーペはよりスポーティに、カブリオレはより優雅にドライブを楽しめるよう、それぞれにふさわしく走りの味つけがボディタイプによって微妙に差別化されている。
エアサスが標準装備になったE300は、よりしなやかでフラット感のある上質な走り味を提供してくれるうえ、3段階から任意に走りのキャラクターを選ぶこともできる。
エンジンもE200とE300では走りの違いが明らか。
どちらも性能的には充分ながら、やはりE300は力強さで上回り、サウンドも6気筒っぽい重厚な音色にアレンジされている。
一方で、BSG+48V電装システムを搭載するE200は発進から緩加速時のアシストや、回すと軽快な吹け上がりを楽しめるなど、上下関係というよりも、両車それぞれに持ち味があるという印象だ。
■独特の快適さをもったカブリオレ、安全面もさらに充実
特筆すべきは、オープンらしい開放感をオープンらしからぬ快適性で味わえるカブリオレだ。
独自のドラフトストップを使うと風の巻き込みが極めて小さくなり、さらにエアスカーフを併用すると寒さ知らずのドライブを楽しむことができる。
後席に2人の成人が不満なく乗れる広さが確保されているのもポイントが高い。オープンなのに剛性感が高いのもさすがはメルセデス。
オープンにありがちな微振動も改良前より小さく抑え込まれている。
安全面では、対応できるシーンを増やした「アクティブブレーキアシスト」や、停車時にドアを開けようとした時に後方から接近するクルマや人がいると警告する機能等が加わった。
また、ステアリングの保持を検知するセンサーが静電容量式になったおかげで、ちゃんと触れているのに保持せよと警告が出て不快な思いをすることもなくなった。
もともとよかったEクラスがこうしてさらに実のある進化をとげたことを歓迎したい。