■『けものフレンズ』以外はありえない、と
編集部 簡単な製作の流れ、企画開始から完成までの工程を教えていただけますか?
高橋氏 ざっくりと言いますと、最初に浜田さんから「アニメ好きって結構たくさんいるので、そういう人たちにも響く、それでいて乗りやすいコンセプトカーを作ってみませんか」という提案がありまして、そこでスケジュールがあいている人間が手を挙げて、そのなかで「どの作品にするか」と「どのクルマをべースにするか」を詰めていきました。
編集部 そこで「『けものフレンズ』でやりたい」と決まったと。
高橋氏 決まりました。
編集部 ほかの作品とかは。
浜田氏 『けもフレ』1本でしたね。「ホンダとして若い人の気持ちを獲りに行くにはどの作品がいいか」を考えると、『けものフレンズ』以外はありえない、というところまで固まっていました。
編集部 実際には、「『けもフレ』とコラボしよう」となったら、次はどういう作業になるんでしょうか。
山田氏 世界観が決まったら、あとはウチの商品でそれに合うものを探す作業ですね。イチから作る時間はないので、『けものフレンズ』の世界観に合った使えるパーツやカラーを探して、それでもない、どうしても必要なものは作って。
高橋氏 そうやって固めていくのはそれほど難しい話ではないんですが、ただ「版権の範囲内でどこまでやれるか」というのが難関なんですね。どこまでやっていいか、という話です。
編集部 「『けものフレンズ』をコンセプトカーに使いたい」という話は「けものフレンズプロジェクト(以下KFP)」とスムーズに進んだんですか?
浜田氏 最初にお話をお持ちした時は、自動車メーカーとしては初めてだということで、いい感じで話が進みました。
こういうコラボは当たったり滑ったりするものなのですが、私は「これは大丈夫」という確信がありましたので、キャラクターの使用契約を(「東京オートサロンのみで使用」という契約も出来たけれど)「1年間」でお願いしています。
編集部 好判断だと思います。
浜田氏 ありがとうございます。ただ「どこまで作り込めるか」というと、やっぱりKFPさんとのやり取りのなかで決めていかなくてはいけないんですね。例えばサーバルのシートの柄はどこまでやっていいかなど。
高橋氏 その点では、KFPさんには相当協力してもらいました。でないとあのクルマはできなかったんじゃないかな。
編集部 それは、具体的にはどうやって進めるものなんですか?
山田氏 デザインができたら送って、生地サンプルを送って、モノができたら写真を送って、それぞれOKが出たら進める、という確認作業を各パーツごとに。
編集部 か、各パーツごとに。
浜田氏 スケジュールが迫っていたのでほぼ毎日チェックしていただきました……。本当に申し訳ないことをしました。
■「普通に乗れること」を大事にしたい
編集部 先ほど「メーカーが痛車を作ったら面白いと思った」というお話がありましたが、「けもフレ フィット」は「痛車」というにはそれほど痛くないクルマだと思います。ここらへんのさじ加減は、やはりかなり気を遣われたんでしょうか。
高橋氏 それは企画段階から考えていました。まず「ファミリーでも乗れる」ということはずっと頭にありました。やろうと思えばどこまででもできるな、とも思ったんですが、いろんな人に話を聞くと、痛車のイメージって「怖い」と思う人もいるんですよね。
そういう「怖さ」は和らげたいなと思ったし、ある種の「あたたかさ」を出したいなとも思いました。なによりも「普通に乗れること」を大事にしたいなと。そういうことを(デザイナーの)山田に伝えると、まあそういうふうにスケッチ描くだろうと。
編集部 そんなムチャ振りを(笑)。
山田氏 ははは(微笑んでうなづく)。
浜田氏 そこの(どこまでやるか、という)センスがすべてだと思うんですけど、アニメ好きの方もいろいろいらっしゃって、「一点もの」を好む層もかなりいらっしゃるんですよね。
「全身好きな作品で固めてます」という方ももちろんいらっしゃるんですけども、そうでなくて「こだわりの一点だけ、あとは普通に生活したい」という方もたくさんいらっしゃる。
編集部 超わかります。
浜田氏 そうはいっても「自分の好きな作品に囲まれていたい」という思いもとてもよくわかりますので、じゃあどこにポイントを置けばいいかということを繰り返し話し合って、「痛くない痛車」というこのクルマのコンセプトに辿り着きました。
編集部 ベース車はなぜフィットに決まったんでしょうか?
浜田氏 『けものフレンズ』という作品自体が、アニメの再放送は朝の時間でしたし、大人から子供までとても幅広く受け容れられているんですよね。
そういう作品と組むんですから、ベースとなるクルマも幅広いユーザーに受け容れられているモデルのほうがいいなと思いました。
それに昨年夏に「クロススタイル」という純正アクセサリーパッケージを発売してまして、それがジャパリパークのテイストを表現しやすい(ホンダアクセスの)パーツだったんですね。
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