■LMはアルファードをベースにさらに高級化
LMの外観は基本的にアルファードと同じだが、フロントマスクにはレクサスのスピンドルグリルが備わる。
LSなどと同様の顔つきで、高級感を盛り上げる。全幅やホイールベース(前輪と後輪の間隔)はアルファードと同じだが、外観の変更で全長は90mmほど伸ばされて5mを超える。
内装も豪華だ。3列シートの7人乗りに加えて、2列シートの4人乗りを用意したことも特徴となる。4人乗りの後席は、アルファードのエグゼクティブラウンジシートをさらに豪華にしたような造りだ。
前後席の間にはパーテーションとキャビネットが装着され、リムジンのような雰囲気を感じさせる。
7人乗りの2列目は、アルファードのエグゼクティブパワーシートに準じた造りになり、シートアレンジも実用性を重視した。2種類のグレードを用途に応じて選べる。
エンジンは販売する地域に応じて、直列4気筒2.5Lのハイブリッドと、V型6気筒の3.5Lを用意する。基本的なメカニズムはアルファードと同じだが、ショックアブソーバーなどは上級化されて快適性を向上させた。
■LM日本導入について販社の見解
このLM300hやLM350を国内に導入する予定はないのか。改めてレクサスの販売店に尋ねた。
「2019年にLMが上海モーターショーで披露された時は、かなり話題になった。日本では販売しないのか、という問い合わせも多くいただいた。しかしメーカーは、トヨタブランド車をベースにしたレクサスは、日本では取り扱わないという。レクサスをトヨタから独立した特別な高級ブランドに育てたいからだ。このような事情もあり、LMを日本で販売する話は聞いていない」。
それでもLMは、レクサスの販売店として欲しい車種ではないのか。
「最近はアルファードが絶好調に売れており、LMを国内で販売すれば、売れ行きを伸ばせると思う。特に今までのレクサスブランドには、ミニバンがなかった。LMがあれば新しいお客様を獲得できる。今の時代に新規開拓を行えるメリットは大きい」
と、コメントした後に続けた。
「ただしLMを唐突に加えることは考えにくい。例えばトヨタブランドのアルファードをフルモデルチェンジする時に、レクサスLMも加えて両車種を連携させるなど、国内へ導入するとしても何らかのブランド戦略に基づくだろう」。
■LMをはじめ新たなカテゴリーの車種が必要
海外市場におけるトヨタ車は、1970年代に発生したオイルショックによるガソリン価格の高騰をきっかけに、「低燃費で耐久性の優れた安価な小型車」として普及した。従って高価格車を好調に売るには、トヨタとは異なる上級ブランドのレクサスが必要だった。
しかし日本国内の事情は大きく異なる。1955年に発売された高級乗用車の初代クラウンが事実上の出発点だ。
そこから1957年に初代コロナ、1961年には初代パブリカ、1966年に初代カローラという具合に、求めやすい価格帯の車種を充実させた。
このようにトヨタの高級車が認知される日本では、レクサスは不要なブランドだったが、1990年代の後半以降はメルセデスベンツやBMWが車種を増やして好調に売れ始めた。
海外のように高級車市場を攻める目的ではなく、国内におけるトヨタの高級車市場を守るために、レクサスを導入した経緯がある。だからレクサスの北米開業は1989年なのに、国内は2005年と遅れた。
そして2020年にレクサスは日本国内で4万9059台を登録したが、メルセデスベンツは5万6999台と多い。メルセデスベンツは車種数が豊富なこともあり、登録台数はレクサスを1万台近く上回る。
この状況を打開して日本のレクサスを成功させるには、ミニバンのLMのようなメルセデスベンツなどの欧州車とは違う国内市場に合ったカテゴリーが必要だ。
ちなみに2005年にレクサスを日本で開業した当初は、「日本のレクサスは海外と違ってSUVなどを扱わない。後輪駆動車を中心にセダンとクーペを販売していく」と述べていた。
ところが実際には売れ行きは伸び悩み、今ではレクサスの主力商品は前輪駆動のSUVになった。
あくまでも市場の性格を重視して、日本のユーザーが欲しい商品を素直に導入すればいい。しばしばブランド戦略は、ユーザーニーズに従うのではなく、それを誘導する趣旨の内容が多いが、行き過ぎると本末転倒になって失敗に終わる。
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