ポルシェは最新992型の911GT3を2021年2月16日に発表した。日本向け仕様の価格発表、ならびに予約受注開始予定は2021年4月頃となっている。
NAエンジン最強の911といえば“GT3”。はたして最新の911GT3は、先代GT3と比べ、どれほどの進化をみせたのだろうか? 992型GT3のトピックスを挙げておくと、大きなエアインテークが設けられたカーボン製のボンネット、スワンネックと呼ばれるリアウイング、そして先代GT3に比べ10ps/100Nm向上した510ps/740Nmを発生4L水平対向6気筒NAエンジン、ストラットからダブルウイッシュボーンに変更されたフロントサスペンション、さらにはニュルブルクリンク北コースのラップタイムは先代911GT3のタイムを17秒縮めた6分59秒927……。
ここでふと思うのは「こんなに凄いNAエンジンの911GT3を出したけど、ポルシェは911に対して、ハイブリッドやEVなど電動化モデルを出さないのか?」ということ。
パナメーラのハイブリッドやタイカンというEVのスポーツカーをラインナップしているのに、911だけは電動化されていない。それがいつになるのだろうか? いずれにしても2030年~2035年までに電動化しなければいけない。
純ガソリン車のNAエンジン最強の911GT3をリリースする裏で、ポルシェは911の電動化をどう考えているのだろうか、モータージャーナリストの渡辺敏史氏が解説する。
文/渡辺敏史
写真/ポルシェAG
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911GT3という存在
1963年の登場以来、58年の歴史を紡ぎ続けるスポーツカー、ポルシェ911。その心臓部であるフラット6ユニットが水冷化されたのは1997年、モデルコード996型の際になる。その996型に2年後、追加されたグレードがGT3だ。
GT3のコンセプトは端的にいえば、最もサーキットに近い公道用911ということになる。カスタマー向けのワンメイクレース、カレラカップに向けて開発されるレーシングカーとの強い関連性を持つGT3は、他と同じく水冷化は施されたもののその中身は別物、クランクケースには空冷時代からル・マンを始めとするレースフィールドで鍛えられた高負荷信頼性の高いものを採用するなど、ロードゴーイングレーサー的な色合いの濃いモデルだった。
その特殊性ゆえ当初は限定車として販売を開始した初代GT3だが、世界中から注文が殺到、結局は1900台前後を生産するに至る。日本では正規輸入が限定100台で販売されるも争奪戦と化し、並行輸入車も数多く登録された。
これを受けて996型後期以降、GT3は通年販売へと昇格し、それをベースに更に研ぎ澄まされたグレードとしてGT3RSが併売されることとなる。
以降、ベースモデルのバージョンアップに乗じてモデルチェンジを重ねてきたGT3だが、一番大きな変更を受けたのは5代目となる2013年のこと。991型をベースとするそれはフラット6ユニットをM96系からMA175系へとスイッチ、車台もパワートレインもまったく新しいアーキテクチャーとなった。そして去る2月16日に発表されたのが、992型をベースとする7代目のGT3だ。
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