新型911GT3はどこが凄いのか?
新しいGT3が搭載するエンジンはMA175系のフラット6で、排気量は5代目の3.8Lから行程側を若干伸ばして4Lへと拡大された6代目のそれを踏襲している。それでもボア×ストロークは102✕81.5mmと、現在の四輪用エンジンのトレンドを鑑みれば相当なショートストローク型といえるだろう。
初代からの自然吸気の伝統はもちろん継承され、5代目以降は直噴化による効率向上も果たしたうえ、この7代目ではユーロ6d排ガス規制対応のため、両バンクに大きな排気抵抗となる2つのGPFを装着している。新しいGT3のエンジンはこの不利を跳ね返して、地道にアウトプットを向上させた。
その最高出力は510ps/8400rpm。前型が500ps/8250rpmなので、更に高回転・高出力化が図られているのがわかる。同様に、最大トルクも470Nm/6100rpmと10ps&100Nmのアップを果たした。
組み合わせられるトランスミッションは6速MTと7速PDKで、0〜100km/h加速は前者が3.9秒、後者が3.4秒となる。320km/hの最高速も含めて、前型に対しての数値的な差はほとんどない。
と、このデータが示す通りで、今やGT3を3ペダルで操るという行為はアナログ的な様式を慈しむ以外の意味はないといえる。かねてから911のスパルタンなモデルのエンジンはバイクのように吹け上がるという形容がなされるが、このMA175系ユニットもそのレスポンスはバイクさながらで、クラッチを踏んでシフトレバーを動かして……と悠長なことをやっている間にパワーバンドをロストするほど。
あるいは些細なシフトミスでも9000rpmのレッドゾーンを突き抜けるほど回転上昇もシビアだ。ほかの911、あるいはボクスター&ケイマンなら充分活きる余地のある6速MTも、ことGT3については積極的には勧められない……と、そのくらい、別物のエンジンを積んでいるということだ。
新型GT3はすでにニュルブルクリンクの北コースを走っており、そのオンボード映像も公開されている。タイムは6分59秒台で、前型から実に17秒以上の短縮だ。当然ながらエンジン側の伸びしろだけでこのタイムアップは無理だろう。むしろ新型GT3で一気に更新されたポイントはシャシーやエアロダイナミクスにある。
とりわけ大きなトピックは、フロントサスペンションが伝統のストラット式からダブルウイッシュボーン式へと変更されたことだろう。これは先に発表されたカップレース用車両と同じ、さらに遡ればWECのGTEクラスに参戦するミドシップの911RSRにも採用されてきたものだ。
公道用911では唯一の前サス形式となる新型GT3は前輪側で50mmワイドトレッドとなり、それを収めるべくフロントフェンダーが拡幅された。リアサスはマルチリンクを踏襲するがボールジョイントの追加で高負荷時の精度をより高めたものとなっている。また、5代目から採用される後輪操舵は同相逆相各2度と、より一歩踏み込んだ数値となっている。
エアロダイナミクスは前述のカップレース用車両に準じたものとなっており、ダウンフォース量は前型比で50%増となる。
特に新型GT3を象徴するアイコニックなエフェクトアイテムとして、スワンネック型のリアウイングが挙げられるだろう。これは既にレースフィールドでは主流となっているもので、吊り下げられたウイング下面の流量と流速を稼ぐことでダウンフォースを効率的に生み出すものだ。
ちなみにこのウイングやディフューザーの角度をサーキット用のパフォーマンスポジションに合わせることで、200km/h時のダウンフォースは通常設定の150%増しになるという。
新型GT3のフロントブレーキディスクは408mmに大径化された一方で17%の軽量化を果たしたとアナウンスされており、どんな手法を使ったのかが興味深い。
ほかにもカーボン製ボンネットや薄板ガラス、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーなどの飛び道具でキロ単位の軽量化を積み重ね、タイヤの大径化など性能向上に伴う重量増を相殺。日本の仕様に関する情報はないが、車重は前型と同等の1400kg台に収まる可能性もある。
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