なぜ出力ダウン!? 4年ぶり復活のスズキ ハヤブサが抱える苦悩と革新性

最高出力を抑えたことで本体200万円切りを達成! 188psは出力特性と販売価格でメリットに

 従来型からの9psダウンに対応しようという場合、様々な問題が発生する。一般的には、排ガス規制対応と出力を両立させるためには排気量を拡大することが多い。しかし、ハヤブサは2008年型で40cc程アップしておりそのキャパシティは限られている。また、排気量や出力がアップした際は耐久性も向上させなくてはならず、エンジンが大きく重くなることにも繋がってしまう。

 これらを解決するために新しくエンジンを開発すると今度は販売価格に跳ね返ってくる。特にハヤブサのエンジンは多機種展開されていないので、開発費はハヤブサ単体で回収しなければならない。すでに197psもある中で9psを維持するためにそこまでするのであれば、「なるべく販売価格を抑える」、「他の部分の開発に予算を回す」。こういった判断となるのは自然な流れだ。

初代の1299ccモデルから新型までを比較した出力特性グラフ。この一枚に新型ハヤブサのコンセプトが凝縮されており、初代(1st)をトレースするような谷のないトルクカーブが再現されている<br>
初代の1299ccモデルから新型までを比較した出力特性グラフ。この一枚に新型ハヤブサのコンセプトが凝縮されており、初代(1st)をトレースするような谷のないトルクカーブが再現されている

 それでも新型ハヤブサの開発陣はタダでは起きない。ピークパワーをダウンさせた分で常用域のトルク特性を改善させているのだ。排ガス規制を通しながら、出力特性を維持して最高出力を上げるというのは至難の業なので、むしろ最高出力では無理せずにトルク特性を重視。新型ハヤブサの真骨頂は超絶加速であって、最高速ではない。全くよどみなく加速し続ける性能はこれぞハヤブサ! という開発陣の思いがここに込められているだろう。

 新型ハヤブサの国内での本体価格は196万円~となり、国内最終型の149万円(8%税込み160万9200円)に比べるとプラス約50万円と大幅に値上がりしている。待望の電子制御を獲得し、足回りやスタイルを全面的にアップデートしたとは言え、これ以上の価格上昇は避けたかったはず。スズキは、ユーザーのことを考えて取捨選択をした上でできる範囲で真面目に改良を施し、本体200万円を切る価格を執念で達成したのだ。

右から初代、2代目、最新2021年型まで3世代が勢揃いしたハヤブサ。それぞれの時代に合わせながら変化しつつ伝統を継承していく姿がここにある
右から初代、2代目、最新2021年型まで3世代が勢揃いしたハヤブサ。それぞれの時代に合わせながら変化しつつ伝統を継承していく姿がここにある

新型ハヤブサは最新の電子制御「S.I.R.S.」を採用して現代に通用するマシンに

 初代からの設計を受け継ぐ1339ccの並列4気筒エンジンは、電子制御スロットルの採用や排気系の変更などにより、低中速域の出力とトルクを向上させながら、空力特性の改良によって高速性能を落とすことなく排出ガス規制に対応。エンジン内部はカムシャフトやピストン、コンロッドなど内部のパーツが全面的に見直され、効率と耐久性が高められている。

 また、電子制御のパッケージであるS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を新採用。出力特性、トラクションコントロール、エンジンブレーキコントロールなどの5つの制御をモードから選択できるSDMSアルファを採用したほか、任意で設定した速度を超えないようにするアクティブスピードリミッターをバイクで世界初採用した。

S.I.R.S.の機能のうちの一つであるトラクションコントーロルの機構図。モトGPから発展したバイク用のトラコンは、今やスポーツバイクに欠かせない装備になっている
S.I.R.S.の機能のうちの一つであるトラクションコントーロルの機構図。モトGPから発展したバイク用のトラコンは、今やスポーツバイクに欠かせない装備になっている
フレームやエンジンは改良しつつ従来型を踏襲することで開発コストを抑えている。前後サスはKYB製でフロントブレーキキャリパーはブレンボ製の最新Stylemaを採用した
フレームやエンジンは改良しつつ従来型を踏襲することで開発コストを抑えている。前後サスはKYB製でフロントブレーキキャリパーはブレンボ製の最新Stylemaを採用した

 電子制御にはバイクの傾きなどを計測するIMUとABSコントロールユニットを組み合わせたモーショントラックブレーキシステムも採用されており、バンク中のブレーキ制御や前後ブレーキの連動も自動でこなしてくれる。また、ブレーキを放してもリアブレーキを30秒間保持して坂道発進をサポートするヒルホールドコントロールシステムも盛り込まれており、最新テクノロジーによる安全性と快適性が大きく向上しているのだ。

 そして、国内仕様は独自にスズキ初のカラーオーダープランも導入。ベース色である白、黒、銀のボディカラー3色に外装アクセントカラー3色、ホイール2色を組み合わせることで全18パターンから好みのカラーリングを選ぶことができる。令和の時代を駆け抜ける新たなハヤブサは、メーカーの威信を賭けたスペック競争から距離を置き、ユーザーに寄り添うことを最も重視していることがこのカラーオーダープランからも強く感じられる。

国内仕様のカラーオーダープラン。写真はシルバーの例で、一番上のSTDカラー以外に5パターンのカラーをプラス5万5000円でオーダー可能だ。オーダー車の場合納車は7月以降になるようだ
国内仕様のカラーオーダープラン。写真はシルバーの例で、一番上のSTDカラー以外に5パターンのカラーをプラス5万5000円でオーダー可能だ。オーダー車の場合納車は7月以降になるようだ
カワサキのニンジャH2カーボンは231psで331km/hの最高速を誇る。本来はハヤブサのライバルだが別の道を歩むことが明確になった。このH2は2021年限りで国内販売が終了。時代の流れか…
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【画像ギャラリー】新型ハヤブサのカラーオーダープラン全18色はこちらへ

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