優劣をつけることは難しい
Cクラスは歴代モデルを通して、Dセグメントのベンチマーク車として位置づけられ、世界中のメーカーからライバル視され続けてきた。BMW(3シリーズ)や、アウディ(A4)、そしてレクサス(IS)は、メルセデスのCクラスを研究し尽くしたうえで、「メルセデスとは違なる方向性」を目指し、クルマを進化させてきた。
現行のBMW3シリーズは2019年春登場、レクサスISも2020年秋にマイナーチェンジをうけており、3車種の登場時期にそれほど差があるわけでもないことから、最新こそ最良、とも言い切れない。
装備に多少の差こそあれ、3車種ともどれも味わいのあるハンドリング性能と快適な乗り心地、そして優れた音振性能を実現している。どれを買っても間違いないなく、どれがいいかはもはや好みの問題であり、ひと言で「どのクルマが優れている」という優劣をつけることは、難しい。
あえて言えば、ストロングハイブリッド技術に関しては、レクサスISだけの強みだ。将来的にはBEV(=Battery Electric Vehicle=バッテリー動力のみで駆動するEV)の比率が高まってくるのかもしれないが、まだ5年10年はハイブリッド車が中心となるはずだ。
メルセデスCクラスやBMW3シリーズ、アウディA4は、マイルドハイブリッドとプラグインハイブリッド、そしてBEVで乗り切ろうとしているものの、バッテリーのコストや重量面ではハイブリッド車に対して、不利にならざるを得ない。そうした面では、「レクサスISが一歩リード」とはいえるかもしれない。
またBMW3シリーズは、伝統的な切れのあるハンドリングを持ちながらも、(高速道路上の渋滞時に限るが)ハンズフリー運転機能やリバースアシストといった先進支援技術を備えるなど、かつてのハンドリングマニアだけが唸るようなスポーツセダンのイメージからは離れ、乗り心地も良くなり、総合的に高い完成度を誇るクルマへと昇華している。
ストロングハイブリッドのISか、総合的に高い完成度の3シリーズか、伝統と革新を両立させてきた新型Cクラスか、かなり悩ましいところだ。
世界的なセダン不況の時代、しかし最も売れているメルセデスはCクラス
メルセデスは、ハッチバックのAクラスをブランドエントリーモデルとして設け、GLA、GLB、GLC、GLE、GLS、そしてEQA、EQCと、SUVフルラインアップをそろえている。
「セダン不況」とはいうが、実は2020年外国メーカー車モデル新車登録台数によると、これだけSUVがラインアップされているにもかかわらず、日本で最も売れているメルセデスはCクラス(6,689台)、次いでCLAクラス(6,233台)だ。
BMWも3シリーズ(8,505台)が最も売れており、SUVタイプよりも多い。もちろん安心できる状況ではないが、メルセデスのようなプレミアムブランドを求めるユーザーにとっては、まだまだセダンの需要がある、ということなのだろう。
その背景には、7年おきにきっちりとフルモデルチェンジを行い、商品の競争力を保ち続けるメルセデスの姿勢もある。セダンであっても、モデルチェンジを行いしっかりと時代にあわせたクルマづくりをしていくことで、現代のユーザーも惹きつけられるのだ。
新型Cクラスの幅広いラインアップがそろうには、まだまだ時間がかかる模様(新型C200およびC220dの納車は本年秋ごろ、C200 4MATICは2022年第一四半期、C350eは2022年中ごろ、ステーションワゴンのC200およびC220dについては、2022年第一四半期の配車開始とのこと)だ。
最新装備を満載し、さらに高級感を増して登場した新型Cクラス。今回の新型でもCクラスは間違いなく「最も売れるメルセデス」となるだろう。
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