海外トヨタにおけるEVの出発地点
イノーバの生産はインドネシアとインド、台湾で行われている。トヨタ生産方式を現地へ持ち込み、生産から販売まで日本の力を加えずに、新興国だけで完結するクルマだ。このようなクルマがBEV化されることは、自動車市場全体のBEV化を大きく加速させることにもつながるだろう。
自動車の電動化技術を積極的に取り入れているインドネシアでは、HEVやPHEVを含め、これまでに11モデルの電動車を販売してきた。販売台数は5800台を超え、約1万5000トンの二酸化炭素排出量削減に貢献している。
また、2021年4月からは、バリ州ヌサドゥアの観光エリアにおいて、EVスマートモビリティプログラムがスタートした。トヨタが、観光客向けの電動車として、トヨタCOMS(BEV)やプリウスPHEVなど、30台の電動車を提供している。
イノーバEVコンセプトは、こうした電動化への取り組みを、非日常域から日常へ広げていく。「特別な車」と称されたイノーバEVコンセプトは、今後の新興国自動車市場の方向性を、決定づける1台となっていくはずだ。
イノーバEVコンセプトがもたらす日本への影響
イノーバは登場から長きにわたり現地で愛されてきたが、これまで日本導入がささやかれたことはない。ラダーフレームを用いたミニバンは、日本では希少な存在だ。しかし、機能性や快適性に目を向けると、日本国内のニーズを満たすクルマにはなっていない。
イノーバEVコンセプトについても、新興国市場に限った展開が予想され、欧州や北米、日本市場への導入はないと考える。しかしながら、先代ハイラックスのプラットフォームを用いてBEV化されたことは、今後のトラック(ピックアップを含む)車両へ、技術の広がりが期待できるものだ。
bZ4X、レクサスRZと、新たなBEVを続けて発表してきたトヨタ。今後BEVラインナップは乗用車のみならず、商用バンやトラックにも広がっていく。ここで、イノーバEVコンセプトにより培われた技術が、役に立つだろう。
日本ではSUVからスタートしたトヨタBEVだが、今後セダン・コンパクト・ミニバンなどに広く普及していく。仕様が大きく違うため同様にとはいかないものの、BEVミニバンの先陣を切ったイノーバの存在は、良いお手本となるのではないか。
BEVならではのパワー、そして静粛性などは、ミニバンを作る上でも好都合だ。今後、国内市場にはイノーバEVではなく、e-TNGAを使った新型BEVミニバンが投入されていくだろう。
トヨタによる世界を舞台にした、壮大なBEV計画はまだ始まったばかり。今後、各地で培われた技術が結集し、大きな成果となって現れるはずだ。そのときを、期待して待ちたい。
【画像ギャラリー】トヨタがインドネシアで発表した新型EVミニバン「イノーバEVコンセプト」(11枚)画像ギャラリー
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