■ホンダの決意を感じる新型ステップワゴン
それゆえ、6代目となる新型ステップワゴンは、ボクの見るところ「原点回帰」がひとつの大きなテーマになっているように思う。
2016年をピークにミニバン市場全体が縮小するなか、これまでと同じことをやっていてもダメ。開発チームにはそんな危機感があったはず。
ノア/ヴォクと同じ土俵でマスユーザー層を狙うのではなく、ミニバンネイティブで育ったミレニアル世代や、「オラオラ顔はどうも……」という価値観のユーザーを積極的に狙っていく。
ある種の「逆張り」ではあるんだけど、ステップワゴンのセグメントシェアは現状17%ほどなんだから、2割取れたら成功。そんな割り切った覚悟を、この新型から感じるのだ。
まずは、エクステリアデザインを見てほしい。端正な箱型プロポーション、ピシッと水平に引いたベルトライン、シンプルなフロントマスク、縦長のテールライト……。まんま、初代・2代目のオマージュと言っていい。
最近のミニバンデザインは、アルファードやエスクァイアに代表される「オラオラ顔」が売れ筋で、つい先日モデルチェンジしたノア/ヴォクもその路線を堅持している。あえてそこを狙わないのは勇気のいる決断だが、そう腹を括ったからこそ、ライバルにはないキャラクターが出せたとも言えるわけだ。
インテリアの雰囲気も、ちょっと初代を彷彿させる。
インパネからぐるっと回ってベルトラインまで、視界の基準点となる水平線がきっちり整っていること。
また、ファミリーカーなんだけれどテイストがベタじゃなく、最近はやりのミニマリズムっぽい感覚があること。このモデルから全幅1750mmと5ナンバー枠縛りをやめたこと。これらの相乗効果で室内の広々感は抜群だ。
一方、パワートレーンに関しては、電動化時代を見据えてe:HEV比率をほぼ倍増の60%程度まで引き上げる目標を設定。ベースの1.5Lターボに対して約38万円のアップとなるが、WLTC燃費は約43%ほど良好。ドライバビリティのよさも考慮すると、e:HEVを選択する価値は大いにある。
チョイ乗りながら試乗の機会があったのだが、市街地レベルの速度域では電動走行比率が高くスムーズかつ静粛。乗り心地の向上も顕著だし、「ハード面では新型ノア/ヴォクといい勝負」という第一印象だった。
新型ステップワゴンのキャッチフレーズは「よゆう・じゆう for You」というもの。また、プレスキットなどには、「安心×自由」というフレーズも多用されている。
それに対して、豪華とか便利とか子供への配慮とか、生活感のあるアピールはあえて抑えているようで、あまり目に入ってこない。
ファミリーカーのど真ん中から、ちょっとズラしたマーケティング戦略。今度のステップワゴンの狙いはそのへんにあるような気がして、なかなか興味深いモデルチェンジ戦略だと思いましたねぇ。
■3列目まで快適空間!
先代型ステップワゴンで特徴的だった「わくわくゲート」は新型では非採用。さまざまな理由があるのだろうが、開発責任者の蟻坂篤史LPLは「左右非対称のリアゲートデザインがユーザーには不評だった」との調査結果を説明。
また「横開きのリアゲートを、ユーザーはそれほど求めていなかった」という調査結果などを総合的に検討し、一般的な跳ね上げ式テールゲートとしたという。
これによってテールゲート開口部地上高を30mm高く設定。その分サードシートの床下収納の高さに余裕ができ、サードシートは座面クッション厚が21mm、背もたれ高さが45mm高くなり、座り心地が格段によくなっている。
わくわくゲートでは後部からの乗り降りを想定していたため、ここを低くする必要があり、サードシートを床下収納するために、サイズの制約が厳しかったのだという。
実際、新型のサードシートに座ってみると、ゆったりとくつろげる。2列目は最大865mmのロングスライドなので、ほどよくゆったり座れるポジションに設定。その際でも3列目はニースペースにコブシひとつ分以上の余裕があるし、頭上スペースに圧迫感はない。
また、ヒップポイントが2列目→3列目と高くなっているため前方視界がよく、開放的で乗り物酔いしにくいのだという。
ステップワゴンは3列目が実用的な居住空間だというのを実感。室内を徹底的に「気持ちいい」空間としたのが新型ステップワゴンなのだ。
【画像ギャラリー】室内明るく広々!! AIRとSPADA、ふたつの個性で登場のホンダ新型ステップワゴン(23枚)画像ギャラリー
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