■新しいクラウンの物語
そして、迎えた16代目。日本の歴史に重ね合わせれば、徳川幕府の江戸時代も15代で幕を閉じています。「何としても、クラウンの新しい時代をつくらなければいけない」。私は、決意と覚悟を固めておりました。
「一度『原点』に戻って、これからのクラウンを本気で考えてみないか」。
開発チームにそう伝えたところから、16代目の開発が動き出しました。
私の言葉を受けて、クラウン・チームは歴代主査の想いに立ち戻ることから始めました。
中村健也さんはこう言われています。
「信念をもって人にモノを売るということは、『自分の心でいいと思うもの、本当のお客様の心が入ったもの』をつくるということです。自分の主張を盛り込んだクルマに乗ってもらって、初めてお客様は『面白い。乗りたい』と言ってくれる。そうやってクルマを世に問うことが主査の役割なんです」。
これが「主査制度」の「原点」であり、私たちが目指している「もっといいクルマづくり」の「原点」だと思います。
あれから2年。チームの皆が形にしてくれたものは、これからの時代のクラウンでした。私が初めて新型クラウンを見た時の言葉は、「面白いね」。そして、乗ってみて、クルマから降りた時の言葉は、「これ、クラウンだね」でした。
本日、新しいクラウンが誕生いたします。16代目のクラウン。日本の歴史に重ね合わせれば、それは「明治維新」です。
ご覧ください。新しい時代の幕開けです!(アンベール)
新時代のクラウンの誕生です!
(ここで登壇者が交代して、中嶋裕樹氏(Mid-size Vehicle Company President)が登場する)
■「セダンも考えてみないか」と豊田が…
新型クラウンの開発を担当いたしました、ミッドサイズ・ビークルカンパニー プレジデントの中嶋です。今回のクラウン開発の経緯についてお話させていただきます。
2年と数ヵ月前のことですが、まず私が手掛けたのは、現在走っているクラウンのマイナーチェンジでした。社長の豊田にその企画を見せたとき、こう言われました。
「本当にこれでクラウンが進化出来るのか? マイナーチェンジは飛ばしてもよいので、もっと本気で考えてみないか」。
今思えば、ここから16代目のクラウンの開発がスタートしたと思います。
はじめに、歴代主査の想いに触れ、そもそも「クラウンとは何か?」を徹底的に見つめ直すところから始めました。
そこには、クルマの形や、駆動方式という決まりは何もありませんでした。あったのは、歴代主査の「革新と挑戦」というスピリットでした。私たち自身が、「内向き」に決まりをつくり、自らを動けなくしてしまっていたのです。
同時に、社長就任以降、豊田が言い続けてきた言葉を思い起こしました。
「もっといいクルマをつくろうよ」と「世界一ではなく町いちばんを目指そう」。
この2つです。
クラウンがロングセラーであり続けられたのは、歴代主査が常に「町いちばん」で考え、日本のお客様の笑顔を思い浮かべながら、「もっといいクラウン」を目指して、挑戦してきたからだと思いました。
そこから考えを大きく変えました。固定観念にとらわられず、これからのお客様を笑顔にするクラウンを目指そう、と開発を始めたのが、このクロスオーバーです。
ある程度カタチになり、社長の豊田から「これで行こう」とゴーサインが出たと同時に、新しい宿題が出ました。
「セダンも考えてみないか?」
正直、耳を疑いました。一方で、私たちがあのマイナーチェンジの時から、発想を変え、「原点」に戻った今だからこそ、豊田は、セダンをやってみたらどうかと、問いかけているのだと受け止めました。
それならば、この多様性の時代、ハッチバックや、ワゴンも必要だと、4つの異なるモデルを提案した、というのが正直な経緯です。
あらためて4つのクラウンをご紹介いたします。
まずクロスオーバー。このクラウンは、セダンとSUVの融合で、乗り降りしやすく、視点も高く、運転し易いパッケージとしながらも、走りは、新たなハイブリッドシステムとともに、「セダンを超えるセダン」として進化させました。
次にスポーツ。このクラウンは、エモーショナルで創造的な雰囲気を持ち、乗りやすく運転し易いパッケージと共に、俊敏でスポーティーな走りが、お楽しみいただける、新しいカタチのスポーツSUVです。
続いてセダン。このクラウンは、正統派セダンとして、新たなフォーマル表現と共に、上質さ、快適さ、を追求しました。ショーファーニーズにも十分お応えできるモデルです。
最後にエステート。このクラウンは、機能的なSUVとして、大人の雰囲気で、余裕のある走り、アクティブライフを楽しんで頂けるモデルです。後席はフルフラットデッキにもなり、まさしくワゴンとSUVのクロスオーバーとも言えるでしょう。
以上、これら4車種の名前は、すべて統一して「クラウン」です。今回発売のクロスオーバーを振り出しに、これから1年半の期間で順次、世の中に送り出して参ります。
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