“ハリアー路線”から敢えて決別! 新型の狙いは?
新型RAV4は、これまでと同じ車名とはいえ、そこに込めた想いを改めている。開発責任者の佐伯禎一チーフエンジニア(CE)は、「ロバスト・アキュレイト・ヴィークル・ウィズ4ホイールドライブ」と説明し、力強さと使い勝手に配慮した4輪駆動車の意味を与えた。
かつてのRVに比べ、日常性を高めてきたSUVは、今日ではより乗用車的なクロスオーバー車に近づいており、未舗装路を走ることが二の次となる傾向にある。
トヨタには、ハリアーというSUVもあり、それと差別化するうえでも、新型RAV4は悪路にも対処できる逞しさを与えようとしたのである。
C-HRに通じる「キーンルック」と呼ばれる顔つきで米国において人気を博し、ついに2017年には乗用車部門でカムリより販売台数を伸ばしたクロスオーバー的4代目からの転換は、営業部門から反発もあったとされる。だが、佐伯CEは未来を見据え、郊外での存分な走りも視野に入れたSUVへ新型RAV4の舵を切ったのである。
現行カムリで採用された、プリウス等から一つ上の車格のTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の第2弾となる新型RAV4は、運転をはじめた瞬間から質のよい仕立ての車であることを実感させた。
あらゆる手ごたえがしっかりとして、かつ、乗り心地や静粛性に優れ快適である。
ガソリンエンジン車とハイブリッド車(HV)があり、HVが静粛性に優れるのは当然だが、ガソリンエンジン車もエンジン音が耳に届くとはいえ、雑な音域を処理した快い音に終始する。走行感覚は、SUVというより上級乗用セダンのようだ。
直進安定性に優れ、ハンドル操作にも素直に進路を変えて運転しやすい。TNGAによる基本性能の向上とあわせ、4輪駆動システムが適切に走りを支えているからだろう。
“逞しさ”の鍵は3種類の四駆システム
今回、4輪駆動システムには3つの方式が設定されている。
一つは、「ダイナミックトルクコントロール」というフルタイム4WDで、前後トルク配分を行いながら走る従来通りの機構である。
二つ目は、新開発の「ダイナミックトルクベクタリング」と呼ばれる方式で、前後のトルク配分に加え、後輪左右の駆動力配分を走行状況に応じて変えることができる。一例を示せば、カーブに対して後輪外側のトルクを高めることにより、旋回性をあげる機構である。
三つめは、2001年のエスティマ・ハイブリッドから採用されてきた後輪をモーター駆動する「E-Four」で、新型RAV4ではモータートルクを高めることにより後輪駆動車のような運転感覚を味わわせる。
新開発の「ダイナミックトルクベクタリング」は、舗装路でも雪上でも、ハンドルを切り込んだ方へ素直に進路を整え、安定して走る様子を実感できる。タイヤの限界内であれば、自信をもって舗装路から未舗装路まで運転できるだろう。
HV用のE-Fourは、4輪駆動でありながら後輪駆動車のような運転感覚を伝えてくる様子が興味深かった。
従来からの「ダイナミックトルクコントロール」の方式は、それらと比べ良いとか悪いとかではなく、4輪駆動車の素直で安心感のある運転を約束してくれた。
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