相次ぐ廃止は新規車種投入など国内ラインナップ整理の影響も
3車種を廃止する2つ目の理由は、日産が今後国内で扱う車種を切り替えるためだ。
先ごろ開催された『東京モーターショー2019』には、2車種の電気自動車が出展された。SUVのアリアコンセプトと、軽自動車のIMkだ。いずれも国内の市販を前提に開発されている。このような車種ラインナップの新体制を控え、取り扱い車種の整理を進めているのが今の段階だ。
ただし、日本では総世帯数の40%が集合住宅に住み、基本的には電気自動車を所有しにくい。
今は大半の日産ディーラーに急速充電器が設置され、マンションでも電気自動車を所有できると宣伝しているが、常に急速充電に頼るのは駆動用電池の負荷を考えると心配だ(駆動用電池の耐久性は以前に比べて大幅に向上したが)。
また、近隣の販売店が移転することもあるから、自宅の充電設備も必要で、実際には一戸建てでないと所有しにくい。そうなると将来に向けて電気自動車を充実させることは大切ながら、ガソリンエンジン車やe-POWERを搭載した小型車も求められる。
消滅噂のシーマは存続も新車減で日産の国内シェアは低下
さらに今後はSUVのキックスと併せて、キューブのような空間効率の優れたコンパクトカー、廃止されたティーダのような上質な小型車などの品ぞろえも必要だ。
フラッグシップとなるLサイズセダンも大切で、今後も存続するシーマの高級感を一層高めることも求められるだろう。
過去を振り返ると、日産は業績を悪化させて1999年にルノーと業務提携を結んだが、国内販売台数は2007年頃までトヨタに次ぐ2位だった。先に述べた5位まで下がったのは最近の話だ。
そして、国内販売台数の下降と、メーカー別販売ランキング順位の低下は、新型車の減少と合致している。
2010年以降、新型車が減ると、国内販売台数とメーカー別ランキング順位も下がった。自動車産業に限らず、モノ作りは商品力が勝負だから、新型車が減って業績が悪化するのは当然だ。以前のように国内市場に適した商品を充実させれば、活路を見い出すこともできる。
日産との違い鮮明に! 車種統合進めるトヨタは国内で存在感発揮
ちなみにトヨタは、2020年5月になると、東京地区に続いてほかの地域も全店が全社を扱う体制へ移行する。
東京以外の地域にはメーカー資本に頼らない独立した販売会社が多く、東京のように1つの会社に統合するのは難しいが、全店が全社を扱うとトヨペット店やネッツトヨタ店といった系列化の意味は薄れる。
そうすることで、ヴォクシー/ノア/エスクァイアのような姉妹車を減らし、トヨタ車のラインナップを抑えることも、全店/全社扱いの目的に含まれる。
トヨタの世界販売台数に占める国内比率は、軽自動車などのOEM車を含めて17%だ(2019年1~10月累計)。日産の12%に比べると高く、トヨタは国内市場を比較的大切にするメーカーだが、今後は合理化を進める。
どこの市場にも当てはまる話だが、日本で生き残れるのは、日本のユーザーに適した商品を提供するメーカーだ。そのために今では、軽自動車が新車販売の40%近くを占める。小型/普通車市場では、トヨタのシェアが半数近い。
キューブやティアナを廃止した後の日産が、日本でどのような新型車を発売して新たな市場を築くのか。
今の日産は業績の悪化、元会長の逮捕、社長の交代など苦境に立たされているが、その行方は日本のカーライフを大きく左右する。
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