現在ではクラウン・カローラ・センチュリーを除いた全車が、トヨタのCI(corporate identity)をフロントグリルに収めているが、過去にはエンブレムが多種多様に分かれていた。車種や取り扱いチャネルごとにエンブレムが変わっていて、それはそれでカッコよかったのだ。そこで、フロントグリルにトヨタマークを付けなかった、イケてるクルマたちを紹介していきたい。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ
【画像ギャラリー】エンブレムでバカ売れも? 個性光る専用バッヂ一挙公開(20枚)画像ギャラリー七宝焼きで型式が分かるエンブレム
トヨタの秀逸なエンブレムで真っ先に思いつくのが初代MR2だ。1984年に登場したMR2は、日本初の量産ミッドシップカーである。このクルマに付けられていたエンブレムは、力強さや敏捷性、優れた空力性能などを象徴する猛禽類がモチーフになっている。
ティアドロップ型の逆三角形になったエンブレムには、羽を広げた鳥が描かれていた。背景は赤色のチェック柄だ。広げられた両足と前を見つめる鳥の頭を繋いでアルファベットの「A」を表し、3つの縦線で表された鳥の尾がアルファベットの「W」を表現している。
これは初代MR2の型式「AW」を鳥でデザインしたものだ。材質も高価な七宝焼きで作られていたから、当時のエンブレムに懸ける情熱がどれほどのものだったかよくわかるだろう。
ちなみに後継となったMR-Sも専用エンブレムが付けられていて、こちらはRを模した鷹が採用された。ただ、MR2のエンブレムと比べると、どこか味気なさが残る。
【画像ギャラリー】エンブレムでバカ売れも? 個性光る専用バッヂ一挙公開(20枚)画像ギャラリーグリフィン? いや羽の生えたライオンだ
4世代にわたってソアラで使われたエンブレムもいいデザインだった。MR2同様に羽のある生き物なのだが、こちらはライオン。
このエンブレムはグリフィンとも言われることがあるが、ソアラの開発主査である岡田稔弘氏によると、当時トヨタ自販がたまたま商標登録して持っていたのがライオンに羽を生やしたマークで、それをベースにデザインを練ったという。ソアラという車名は最上級グライダーの意味だから、空を飛ぶというのをエンブレム図案のテーマとして考えたというのだ。
最初は空飛ぶ馬がモチーフだったらしいが、王道のペガサスマークはガソリンスタンドのモービルが使っていて、モービルとは違う意匠にしても馬に羽が生えていることは変わらずにボツ。紆余曲折を経て、ソアラに充てられた羽の生えたライオンにたどり着く。
エンブレムひとつとっても、大変な苦労がある。ちなみにトヨタの「羽」系エンブレムは他にも、ハリアーのチュウヒなどが有名だ。
【画像ギャラリー】エンブレムでバカ売れも? 個性光る専用バッヂ一挙公開(20枚)画像ギャラリー青から赤に変わってカッコよさがアップ!
最後に紹介するのは2004年から2017年まで活躍したアイシスだ。
車名の由来になったイシス(エジプトの豊穣の神)から、エンブレムにはアルファベットの「i」が使われている。
実はアイシスのエンブレムにはデザインが3種類あるのだ。発売当初は青地にiのエンブレムだったが、2009年9月の改良で背景色が赤に変わる。さらに2011年にはエンブレムが大きくなり、エンブレムを強調したフロントグリルへと変化した。
ことさらにカッコいいのが、最終形態の赤地に大きなiのエンブレムだ。グリルに走る二本のメッキラインとエンブレムを縁取る逆三角形になった外枠のマッチングがイイ。シンプルながら迫力のあるエンブレムだ。
他にも、エスティマ・ノア・ヴォクシー・エスクァイア・アリオン・プレミオ・マークXなど、トヨタには独自エンブレムを採用したクルマが多かった。筆者のお気に入りは、ネッツ店販売モデルで使われていたネッツのエンブレム。DNAのらせん形状がモチーフになっている洒落たものだった。
エンブレムを共通CIにすることで統一感が生まれることは事実だが、クルマごとに異なる凝ったエンブレムを見るのもまた良いものだ。車種別エンブレムが、また復活しないかなと密かに願いつつ、優れたデザインのエンブレムに今宵も酔いしれたい。
【画像ギャラリー】エンブレムでバカ売れも? 個性光る専用バッヂ一挙公開(20枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方このマークはTOYOTAだ!というコーポレートメーカーエンブレムみたいな物を着けて欲しいな!
(TOYOTAの株主より)
ハリアー、カローラ、ノアヴォクには車種専用残っているものの、かなり減ってしまいました。
昔のトヨタは販売店ごとに独自の世界観を持っていた。今の方が走りのレベルは格段に上がりましたが、内外装デザインまで似たものが増えてしまった。
素性の良さは維持しつつ、昔の良かったところ、車種ごと個性あふれるトヨタが帰ってきて欲しい気持ちもあります