“前”は当たり前でも、“後ろ”は未だ定着せず!? 車のシートベルト、後部座席での着用率は僅か39.2%と過半数割れ。高い危険性にも関わらず、なぜ着用浸透しない?
車に乗った際、前席に座ったのなら「シートベルトを着用するのは当然」と認識している人がほとんどだと思うが、後席はどうだろうか?
JAF(日本自動車連盟)は2019年11月に、警察庁と共同で「シートベルト着用状況全国調査」を行い、その結果を2020年1月24日に発表した。
同発表によるとシートベルトの着用率は、運転席が一般道=98.8%、高速道路=99.6%、助手席も一般道=95.9%、高速道路=98.3%と100%に近かった。
しかし、後席は一般道=39.2%、高速道路=74.1%と非常に低い装着率だった。
シートベルト装着は、後席も含めて全席義務化となっていることはもちろん、事故時に身を守る最大かつ手軽な装備である。
それにもかかわらず、なぜ後席での着用が浸透しないのか? 実は未着用の危険性も二次被害を含めて予想以上に高い。
文:永田恵一
写真:Adobe stock、JAF、HONDA
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シートベルト全席義務化も「罰則なし」で効果薄
シートベルト着用は、前席については1985年9月1日から義務化されている。高速道路については当時から着用が免除される場合以外罰則があり、一般道で装着しなかった際も1992年11月1日から罰則が適応されている。
後席のシートベルト着用も2008年6月1日から義務化されている。現在、高速道路で後席のシートベルトを着用しなかった際には罰則があるが、一般道ではない。
(※運転席・助手席の違反点数は1点、後部座席は高速道路上のみ1点。反則金はともに無し)
このことが、一般道での後席シートベルトの着用率の低さに大きくつながっているのだろう。
危ないのは本人だけじゃない!! 後席シートベルト未着用の危険性
シートベルトは、事故の際に体を拘束し車外放出を防いだり、体が受ける衝撃を和らげるものである。そのため、フロントガラスやハンドルなどがある前席でシートベルトを着用しない危険性は分かりやすく、着用率も高い。
それに対して、後席は「前席が柔らかい壁になるから大丈夫そう」といったイメージもあってか装着率が低い。だが、それはとんでもない間違いだ。
まず、後席の乗員がシートベルトを着用せずに事故に遭った場合、前席も含めて車の内装材の中身は、硬くシッカリしたものなので、当たれば重篤なダメージを負う。
それだけで済めばまだいいが、後席の乗員がシートベルトを着用していないと、体が拘束されておらず飛ばされるため、その際に他の乗員にダメージを与えたり、最悪ガラスを突き破るなどして車外放出されることもある。
JAFは、前席に成人男性2人のダミー人形、後席に女性2人のダミー人形を乗せ、後席右側(運転席後方)のダミー人形だけシートベルトをせずに、55km/hの衝撃をクルマ全体で受け止めるフルラップ前面衝突試験を行ったことがある。
結果は、シートベルトを着用していた助手席と後席左のダミー人形に大きな問題はなかったのに対し、シートベルト未着用だった後席右のダミー人形は、足が運転席バックレストに、頭が運転席ヘッドレストに激突したうえ、体は派手に宙を舞い、大きなダメージを負った。
さらに、後席右のダミー人形は、衝突の際に運転席を介する形で、運手席のダミー人形に対しても押しつぶすように大きなダメージを与えてしまった。
運転席と後席右のダミー人形のダメージは、後席右のダミー人形がシートベルトを装着していれば大幅に軽減できたものだ。それだけにこの実験結果や映像を見れば、誰もが一発で「後席もシートベルトを装着する重要さ」を認識するに違いない。
なお、後席中央など「シートベルトが3点式でなく2点式」という場合も、当然2点式シートベルトの安全性は3点式に劣るが、それでも事故の際のダメージは軽減されるので絶対に装着するべきだ。
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