トヨタのプチバン ルーミーが2025年7月の新車販売台数1位! 地味なのに9年たって売れ続ける不思議

ルーミーは発売から9年が経とうとしているのに売れている理由

エアロスタイルのカスタムG-T
エアロスタイルのカスタムG-T

 ルーミーで注意したいのは基本設計が古いこと。発売は2016年11月だから、既に9年近くを経過する。開発と生産はダイハツが受け持ち、トヨタに供給されるOEMだ。ダイハツブランドでも姉妹車のトールを販売している。ちなみにトールの7月販売台数は698台。

 そしてルーミーは、開発者によると約2年という短期間で開発され、プラットフォームは2004年に発売されたトヨタパッソ&ダイハツブーンの初代モデルと基本的に同じだ。トヨタライズ&ダイハツロッキーが使うDNGAに比べて設計が古い。

 ルーミーのプラットフォームは、もともと950kg前後の車両重量を想定して開発されたが、ルーミーの車両重量は1100kg前後と重い。全高も1735mmに達して高重心だから、走行安定性と乗り心地で不利になった。危険回避を想定した車線変更を行うと、ボディが左右に大きく揺り返し、段差を通過すると突き上げ感も生じる。

 動力性能も同様だ。エンジンは直列3気筒1Lで、自然吸気のノーマルタイプでは、実用域を含めて幅広い回転域で駆動力が不足する。パワー不足に対応してターボモデルも用意したが、頻繁に使う2500回転前後でノイズが大きめだ。

両側パワースライドドア(ワンタッチオープン・挟み込み防止機能付)を採用
両側パワースライドドア(ワンタッチオープン・挟み込み防止機能付)を採用

 居住性では、後席の座り心地が柔軟性に欠ける。床と座面の間隔も不足して、足を前方へ投げ出す座り方になりやすい。そのほか安全装備も設計が古く、後方の並走車両を検知する機能は用意されない。右左折時に直進車両や横断歩道上の歩行者を検知して、衝突被害軽減ブレーキを作動させることもできない。従って機能では、ライバル車のスズキソリオと比べて見劣りするところが多い。

 このようなルーミーが小型/普通車販売ランキングの実質1位になった背景には、複数の理由がある。まずはトヨタ車であることだ。ルーミーの開発と生産を行うのは前述の通りダイハツだが、一般的な認識は「クラウンやアルファードを手掛ける伝統あるトヨタの小型車」だ。ブランド力と安心感が高い。

 販売店舗数もトヨタは国内で約4600箇所と多い。ホンダの約2100箇所、日産の約2000箇所に比べて2倍以上だ。都市部を中心にトヨタ車は他社よりも購入しやすく「販売店がたくさんあるから、どこで故障しても大丈夫」という安心感も大きい。しかもトヨタの店舗は全般的に敷地面積が広く、店内の商談スペースもゆったりしている。車検や点検で入庫する時もイメージが良い。

 車両自体にもルーミーが好調に売れる理由がある。まず背の高いボディにスライドドアを装着するスーパーハイトワゴンになることだ。このタイプは軽自動車には豊富で、国内販売の総合1位になるN-BOX、総合2位のスペーシア、そのほかタント、日産ルークス、三菱デリカミニなども用意される。

 ところが小型/普通車でスライドドアを備えた背の高い車種は、大半が3列シートミニバンだ。2列のスーパーハイトワゴンは、ルーミーとソリオ、その姉妹車やOEM車に限られる。

ルーミーには、助手席グローブボックス上のオープントレイや、センターコンソール下のセンタークラスターポケット、買い物フックなど、座席の周辺に収納スペースが豊富
ルーミーには、助手席グローブボックス上のオープントレイや、センターコンソール下のセンタークラスターポケット、買い物フックなど、座席の周辺に収納スペースが豊富

 そして本当はN-BOXやルーミーが欲しいが「近所に登り坂が多い」「親から軽自動車はやめておけと言われた」など、何らかの理由で軽自動車を避けたいユーザーもいる。小型車サイズのスーパーハイトワゴンが求められ、商品的にはソリオに注目すべき点が多いが、トヨタ車の有利でルーミーが売れ行きを伸ばした。

 ルーミーが実用に徹して価格を割安に抑えたことも、販売が好調な理由だ。収納設備が豊富で、2016年の発売時点から、カップホルダーは500mlの紙カップを含めてさまざまなサイズに対応している。荷室の床を反転させると、汚れを落としやすい素材が貼られ、自転車を運んだ後の清掃もしやすい。

 これらの特徴は、クルマ好きから見れば「走り曲がり止まる」という本質から離れた付加価値だが、街中を中心に使う実用重視のユーザーには大切な機能になる。

次ページは : N-BOXの最も安いモデルとほぼ同額!

PR:かんたん5分! 自動車保険を今すぐ見積もり ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

ベストカー12.26号 価格590円 (税込み)  あの「ジャパンモビリティショー2025…