速度や車間をキープしてくれるACC(アダプティブクルーズコントロール)は、いまや多くの車種に搭載されている。しかし、その制御の賢さや自然さは、メーカーごとに大きな違いがあるのをご存じだろうか。先読みまでこなす欧州勢、カメラ主体で進化を続けるテスラ、そして安全性重視で追いかける国産勢……。ACCという運転支援を通して、各社の技術力と哲学、そして自動運転の現在地を探る。
文:中谷明彦/画像:ベストカーWeb編集部ほか
【画像ギャラリー】完成度の高い欧州車、自動運転を組み込むアメリカ、国内の交通事情重視の日本 各国メーカーACCの最前線! 自動運転の現実性はどこまで見えてくるか!?(19枚)画像ギャラリーいまでは当たり前になってきたACCだけど……
アダブティブクルーズコントロール(以下ACC)は、長距離運転時の疲労を軽減するための運転支援装置として、現在ほとんどのメーカーが標準装備もしくは主要オプションとして採用している。かつて「クルーズコントロール」と呼ばれていた初期の装置では、アクセルペダルを制御し設定した速度で走行を維持するだけの単純なものだった。
交通量が少なく、ほぼ直線だけのアメリカのハイウェイではそれで十分機能し実用的だったが、交通の流れが複雑化する現代の環境では不十分だ。ミリ波レーダーやカメラによる認知技術の進化によって、前走車との距離を保ちながら加減速を自動制御するシステムが登場し、現在のACCへと発展した。
車間距離だけでなく、停止・再発進を伴う渋滞追従機能までが組み込まれ、運転支援の実用度は飛躍的に向上していると言える。 ACCの性能は、前方車両をどれだけ正確に認知できるか、加減速をどれほど滑らかに制御できるか、そして周囲の状況変化にどの程度予測的に対応できるかによって評価される。
センサー構成は重要であり、単一のレーダーでは割り込みや複雑な車線変更を早期に検知できないことがあるが、ミリ波レーダーとカメラを統合したセンサーフュージョン型では、周辺車両の挙動をリアルタイムに感知し、制御を行うことが可能となる。
また、減速のタイミングやスロットル開度の制御は、単に速度を抑えるだけでなく、ドライバーが自然に感じるタイミングで動作することが求められる。ACCの優劣は、車両が停止や再加速をどのような速度変化(G変化)で行うか、その一連の挙動に現れてくる。
さらに重要なのは、他車のウインカー点灯や挙動の変化を検知して事前に対応できる「先読み能力」であり、この領域で各社の技術哲学の差が顕著となる。
高いレベルのACCを実装しているのはアノ国のメーカー!
現時点で最も完成度の高いACCを持つのは、ドイツ系メーカーである。メルセデス・ベンツ、ポルシェ、アウディ、BMWなどは、いずれも高度な統合制御を行っており、車両運動性能に即した緻密なチューニングが施されている。
前走車がウインカーを点灯して車線変更を始める直前の段階で減速準備を開始し、割り込み後には自然な加減速でスムーズに速度を調整されれば理想的。ポルシェのACCは、加減速の即応レスポンスを確保しながらも乗員に不快な挙動を与えないよう制御されており、ドライバーの意図を妨げない。
これらは技術的な革新だけでなく、テストドライバーのキャリブレーションと経験値が生かされてくる。
快適性と精度を高次元で両立させるのは簡単ではない。いずれのメーカーも、単なる電子制御ではなく「車両運動の理解」に基づく制御哲学を持ち、荷重移動やグリップ限界を考慮した自然な動作を実現している点が特徴的なのである。





















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