【王者N-BOXに肉薄&タントと大デッドヒート!!】絶好調スペーシアの武器と人気上昇のワケ


■タントの打った策によって勝負は拮抗

 この乱高下は、2019年10月に発生した台風19号の影響が大きい。尊い人命が失われ、自動車の流通も影響を受けた。同月には消費増税もあり、ダイハツ全体の対前年比はマイナス26%、ホンダは40%、スバルは49%減った。スズキも減ったが9%に収まっている。国内販売は特殊な状況に置かれ、タントも10月に減って11月は反動で急増した。

 さらに2019年12月には、先に述べたとおりスペーシアが再び2位に上がってタントは3位に落ちた。12月のタントの売れ行きは前年に比べて18%減っている。この時はまた別の事情があった。新型タントの発売後の伸び悩みを心配して、2019年12月23日に、新しいグレードのセレクションシリーズを追加したことだ。

ダイハツ「タントカスタムRS”セレクション”」。このモデルには、コンフォータブルパック、スマートクルーズパック、スタイルパックというパックオプション(トータルで約12万円)が標準設定され、かなりお買い得なものになっている

 このシリーズは買い得感が強い。例えば標準ボディのXセレクションでは、360度スーパーUV&IRカットガラス、チルトステアリング、運転席シートリフターなどを含んだコンフォータブルパック(3万8500円/2WD)をプラスしながら、価格はXと同額の149万500円に据え置いた。

 このような買い得車は、通常は新型車には設定しない。モデル末期に特別仕様車として投入することが多い。それを発売から5カ月後に追加したのだから、ダイハツはタントの売れ行きに相当な危機感を抱いていた。

 しかも、セレクションシリーズは買い得なために、既存のグレードをそのままでは売れなくなってしまう。そこで販売会社は、セレクションシリーズの追加に伴い、在庫車にカーナビを無料装着するなど値引きの拡大を強いられた。このセレクションシリーズと在庫車の入れ替えにも時間を取られ、12月は対前年比が18%のマイナスになった。

 2020年1月になると、セレクションシリーズによるタントの反撃が期待されたが、これまた伸び悩んだ。対前年比は6%減り、スペーシアを抜けない。スペーシアも、スペーシアギアを加えた直後の2019年1月に比べて14%減ったが、タントの販売台数はさらに少なかった。そして2020年2月になり、タントはようやくスペーシアを抜いて2位になれた。それでもタントの販売台数は、対前年比で4%の減少だ。

 ちなみに先代タントが発売された翌年の2014年には、1年限りではあったがタントの売れ行きが先代N-BOXを上まわり、国内販売の1位になった。2014年の対前年比も62%の上乗せであった。この先代タントの売れ方に比べると新型は勢いが乏しく、ライバル車のスペーシアはギアの追加もあって下降を食い止めたから、タントとスペーシアが接戦になっているわけだ。

■ダイハツとスズキ ともにナンバー1を譲れぬ理由あり

 そして2020年1/2月の軽自動車累計販売台数をダイハツとスズキで比べると、ダイハツが上まわったものの2203台しか差がない。仮にこのままタントが伸び悩み、新型になったハスラーが好調に売れてスペーシアも堅調を保つと、ダイハツの軽自動車販売1位がスズキに奪われかねない。

 ダイハツやスズキの販売店では「軽自動車の販売ナンバーワンは大切」という。「軽自動車はボディサイズがすべて共通で、背の高い車種は外観も似ている。車種ごとの個性がわかりにくい。特にクルマに詳しくないお客様の場合、販売ナンバーワンなら間違いないと判断して、買う車種を決めることがある」。

 以上のようにさまざまな事情と思惑が絡み合い、販売ランキングの順位が決まる。「売れてないからダメ」と片付けず、なぜ売れていないのか、さらにセレクションシリーズのようなグレード追加までチェックすると、販売ランキングの真実が見えてくる。それは今の自動車業界の国内事情を読み解く手段にもなり得る。

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