1997年12月にトヨタは初代プリウスをデビューさせた。そのプリウス以降、トヨタはハイブリッドカーを一部モデルを除きハイブリッドカーのラインナップを増強させてきた。
対するライバルもトヨタに対抗すべくあの手この手でハイブリッドカーの分野でオリジナリティを存分に発揮している。
日産のシリーズハイブリッドのe-POWERに続き、ホンダも新型フィットに2モーターの直結タイプのe:HEVをデビューさせて話題になっている。
欧州メーカーはプラグインハイブリッドの市販化に精力を注いでいて、トヨタもプリウスPHVに続いて、日本でも夏からRAV4 PHVの販売を開始する。
ハイブリッド王国トヨタのハイブリッド戦略はこのままでいいのか? その現状と今後を鈴木直也氏が考察する。
文:鈴木直也/写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、平野学、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】四半世紀経過してもトップに君臨するトヨタハイブリッドの進化の系譜
新型ヤリスハイブリッドの燃費に驚愕
ハイブリッドカーを作る最大の目的は何か? CO2の削減を含め、燃費性能の向上のため。初代プリウスの登場以来、ハイブリッドカーはガソリンエンジン車では実現できないような省燃費をアピールしてきていることからもわかると思う。
トヨタは新型ヤリスを登場させるにあたり、燃費を20%向上させると宣言、新型ヤリスはWLTCモード燃費35.8km/Lでデビューした。職業柄、カタログスペックに踊らされることはない。
しかしベストカー誌でコンパクトカーのテスト企画において、燃費テストを敢行し、ボクもテスターとして参加したのだが、ヤリスの実燃費には本当に驚かされた。
WLTCモー燃費のそれぞれのモード、市街地、郊外、高速道路を合計100km弱走行して、それぞれのモード燃費と総合燃費を計測した。
その燃費テストで新型ヤリスは31.9km/Lをマーク。WLTCモード燃費が35.8km/Lだから達成率は89.1%。ちなみに一緒にテストした新型フィットのクロスターは24.5km/Lで、WLTCモード燃費が27.2km/Lだから達成率は90.1%となった。
この実燃費のすばらしさもさることながら、新型ヤリスは郊外で40.0km/Lの平均燃費をマーク!! これには正直驚きを隠せなかった。
ボクはかつて愛車として燃費スペシャルと言われた初代インサイトに乗っていたが、40.0km/Lという燃費は出したことはない。
アルミボディで軽量化、空力にこだわったボディワーク、そして2シーターというスペシャルをもってしても出せない燃費を、ごく普通の実用コンパクトカーがたたき出した。
しかも燃費をよくするために特別なドライビングをしたとかはまったくなく、ごく普通に流れに乗って走った結果が40.0km/Lだったということで、これは誰にでも可能ということも驚異的に感じる点だ。
どういうシステムを使うかは二次的な要素
ハイブリッドカーは今では各メーカーが独自のシステムを考案して商品化、いろいろなクルマに搭載してきている。
エンジンは発電専用としたシリーズハイブリッドのe-POWERをノートに搭載して活路を見出した日産、新開発の2モーター直結ハイブリッドのe:HEV(イーエイチイーブイ)を新型フィットに搭載してきたホンダへの注目度が高まっている。
日産のe-POWER、ホンダのe:HEVは通常走行はモーター、つまりEVと同じである点が共通している。
トヨタは従来方式であるTHS-IIを進化させて新型ヤリスに搭載しているが、トヨタが日産、ホンダのようなモーターで走行するシステムを登場させるのか?
その答は新型ヤリスで出ている。ハイブリッドカーを登場させるにあたり、どういうシステムを使うかは二次的なもので、前述のとおりいかに燃費をよくするかが重要だと思う。
THS-IIを進化させた新型ヤリスはすばらしい結果を出してきている。ここにトヨタのハイブリッド戦略の揺るぎなさを感じる。
クルマ界に限らず技術というのもは、後から出したものがパイオニアを追い越し淘汰されるというのが常だが、ことハイブリッド技術に関しては、トヨタが先鞭をつけ、四半世紀経った現在も常に先行している、というのは珍しいことだし、本当に凄いことだ。
ホンダは新型フィットe:HEVを登場させるにあたり、「数字を追うのはやめました」と宣言していた。これは戦略として十分ありだとは思う。
しかしシステムは違うけど同じ1.5Lのハイブリッドで、しかも重いインサイトよりもWLTCモード燃費が悪いというのはいかがなものか(インサイトLX:28.4km/L、フィットNESS、クロスター、LUXEのFFは27.2~27.4km/L)。
コメント
コメントの使い方