子供の頃、クルマに乗っていても、電車に乗っていても、なぜかトンネルに入るとワクワクしたものですが、自分でクルマを運転するようになると、トンネルに関連してさまざまな現象が発生します。
時にはそれは危険を伴うことにもなります。
日本には全国で1万506カ所のトンネルがあり、特にロングドライブなどではトンネルを避けて通行することはほぼ不可能です。
トンネルで発生する不思議な現象もなぜ起こるのかの知識を持っていれば慌てる必要はありません。ここでは突然体験するとビックリするトンネルでの不思議な現象について見ていきます。
文:諸星陽一/写真:ベストカー編集部、平野学、Adobe Stock
【画像ギャラリー】日本のトンネルは全国で1万506カ所!! 最も長いのは約20km!!
知らないうちに速度が低下!?
トンネルに入った瞬間に起きがちなのが、速度が落ちるという現象です。
これにはいくつかの原因があります。ひとつは景色が大きく変わるということです。トンネルに入る手前の景色が開けている場合は、トンネルに入った瞬間に道路幅が狭くなったように感じてしまい、思わずアクセルを戻して速度が落ちてしまうのです。

道路にポールが立っていたり、パイロンで道幅が規制されていたり、ペイントの錯覚によって道幅が狭くなるときなどもドライバーは速度を落とします。それと同じ状況がトンネルに入るときに起きるというわけです。
特にトンネルに入った際には視野が狭まることで速度が増しているように感じのも大きく影響します。
空を飛んでいる飛行機はゆっくり見えますが、実際は離陸時で300km/h程度、巡航時で800km/hにも及ぶといいます。
つまり遠くのものはゆっくり見えるのです。今まで見ていた景色が遠くで、トンネルの中では壁が近いために速度を速く感じてしまうということも起きます。

オートライトの功罪
さらにそれだけではありません。
トンネルに入ってからライトを点灯する、もしくはオートライトの場合はトンネル入ったことでライトが点灯するということがあります。
薄暗くなったところでテールランプが点灯すると、まるでブレーキランプが点灯したかのように感じてしまい、航続のクルマもブレーキを踏んでしまうことが起きます。

通行量が多い場合は、次々にブレーキを踏む現象が起き「サグ」と言われる状態となり渋滞が発生します。
後続車は先行車よりも速度を落とす傾向にあります。後続車が1km/hずつ速度を落とすと、先頭が100km/hで走っていても100台後ろのクルマは止まっていることなるのです。
トンネル進入時はトンネルに入る前の周囲が明るい状態でライトを点灯することで、後続車にブレーキを使用しているのではないことを伝えやすい(テールライトは光量が少ないので、明るいとわかりづらい)のですが、現在はオートライトが義務化されたため、今後はトンネルに入ってからライトが点灯するクルマが増えることが予想されます。

これを防ぐにはトンネルに入る際はマニュアルで点灯することですが、自分が迷惑を被る状況ではないので、この方式は普及しません。
オートライトをナビの詳細地図データと連動させればトンネル手前で点灯することができ、その方法をずいぶん前から提案していますが、いまだに採用はされません。
前走車が消える!?
先ほどはトンネルに入る時の話でしたが、次はトンネルの出口付近での話です。
対向車のヘッドライトに歩行者が隠れてしまう「蒸発現象」というものがありますが、これと同じ現象がトンネルの出口で発生することがあります。
トンネル内とトンネル外は明暗差がかなりあります。このため、先行するクルマのボディ色が明るい場合、出口から出たとたんに明るさのなかに紛れてしまい、見えなくなることがあります。

よく、トンネルの出口手前でヘッドライトをオフにする人がいます。そのほうがカッコイイと思っているような発言を聞いたこともありますが、ヘッドライトはトンネルをしっかり出てから消すことで、自車の存在をアピールできます。
トンネルの入り口、そして出口ではこうした現象が起きやすいのは昼間です。夜はトンネルの外も暗いのでそうした現象が起きることは減ります。
著しい明暗差がある昼間に、前述の状況が起きやすくなります。そうした状況を減らすためにトンネルの照明にも工夫がされています。トンネルの照明は入り口と出口は個数が多く、そして中間地点は速度がわかりやすいように照明を等間隔に配置します。
横のクルマに突然幅寄せされる!?
さて、トンネル内では横を走るクルマとの間隔が狭くなり、まるで幅寄せされているかのような感覚に陥ることがあります。相手車両が幅寄せをしているわけではないのですが、自然と自分側に寄ってくることはあります。
また、自分も相手に寄っていくことがあります。トンネルの両側は壁になっていて、圧迫感があるためにどうしても中央車線よりになってしまうのです。

危険なのは近寄ってきたクルマが気になってそのクルマを見続けてしまうことです。人間は見た方に動く特性を持っています。人混みで対面した人と同じ方向によけてしまうのはこのためです。
ですので、近寄ったクルマを見てしまうとそちらへと引き寄せられるようにクルマを動かしてしまうのです。これはなにもトンネルの中だけで起きるものではなく、普段も発生します。
珍しいクルマだな、と思ってもそのクルマをずっと見ていてはいけないということです。
前のクルマが止まっているように見える!?
トンネルの中は景色に変化がないうえにカーブがあったとしてもゆるいものなので、非常に単調なものとなります。そのため、先行するクルマに追従して走っていると、まるでクルマが止まっているような感覚に襲われることがあります。
この状態を「追従静止視界」と呼びます。特に高速道路など速度が変化しづらく、単調なほどこの「追従静止視界」は発生します。

2台のクルマの相対速度はゼロとなるので、止まっているように見えても不思議ではないのですが、対地速度としてはそれなりに速いため、運動エネルギーは大きく、事故などが発生した際の被害も大きくなります。
先行車との車間距離を一定に保つことに気を取られて速度がどんどん上がってしまうこともあるとのことです。ACCの場合も同様ですが、ACCは安全な車間距離を保つように働くのでその面では安心です。
トンネルを抜けると別世界!?
よく言われることですが、山間部のトンネルなどではトンネルを出た瞬間に強風にあおられることもあります。また、西向きの道路だと出口付近で強い西日にさらされることもありますし、ワイパーが効かないような大雨が降っていることもあります。
トンネルの中は意外なほど環境が安定しているので、出口で突然環境が変化することも考え、電光掲示板や道路交通情報のラジオなどを利用することが大切です。
