「系列統合」と新型コロナで苦悩するトヨタ販売店の今

全店扱いは販売店にとってどんなメリット、デメリットがある?

5月以降、順次全国の販売店はトヨタモビリティ東京と同じCIに統一されていくことになる

 前述したが、5月から始まる全国の全車種全店扱いは、東京地区と同様と思われるが実際にはかなり異なる。

 東京地区以外の全国の販売店の大部分の地域は地場資本店で占められる。2~3の有力資本販社がトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店を設立し、それぞれ別会社を設置している。

 ただし、地場資本でも神奈川地区のように統合して「トヨタモビリティ神奈川」を発足させるケースもあるので、中長期的に見れば、今後地場資本店地域でもこうした統合販社が設立される可能性もある。

 系列店が継続する地域は、販社にとってメリットとデメリットが混在する。メリットはこれまで扱えなかった車種が売れるようになるので、販売の効率が良くなり各販社は収益が上がる。

 統合前だと扱っていない車種をユーザーが買いたいと希望する場合は最寄りの取り扱い販売店に紹介するだけで、販売実績には反映できなかったが、今回からトヨタ車であればすべてを直接売れるようになる。

 デメリットは何か? これまでの専売車を独占的に売ることができなくなり、旨味がなくなるのが大きい。

 加えて異なる系列店との同じ車種の販売競争が激化し、値引き幅が拡大し、中長期的には各取り扱う車種の収益がダウンするようになる可能性が強い。

 競争に負けるようだと最終的には当該店舗の存続が難しくなることにつながるのだ。

 旧トヨタ店、トヨペット店は店構えが大きく、収益の上がる商売ができるようになっているが、旧カローラ店やネッツ店は小規模店が多いので、統廃合の対象になりやすく、戦々恐々と感じている販売店も多い。

■販売店のメリット
・トヨタ車であればすべての車種を販売できるので、販売の効率が良くなり、各販社は収益が上がる。
■販売店のデメリット
・専売車種を独占できなくなるので他の販売店にユーザーが流れる。とはいえ、専売車種を販売してきた強みがあり、それをどう生かしていくのかがポイントとなる。
・異なる系列店との同じ車種の販売競争が激化し、値引き幅が拡大。中長期的には収益が悪化し、収益の悪い販売店の存在が厳しくなり、統廃合につながる。

ユーザーのメリット、デメリットとは?

カローラ店の看板(左)は右の看板に変わった(東京地区)

 その一方で、全店統合はユーザーにどんなメリットがあるのだろうか? 実は、ユーザーにとってはメリットが大部分で、デメリットはあまりない。

 トヨタの各系列店のどこへ行っても全トヨタ車を買えるので、値引き競争をさせて可能な限り安く買うことができる。

 実際、首都圏の販売店(東京地区を除く)では、全店扱い前の4月中旬にもかかわらず、RAV4、ノア/ヴォクシー/エスクァイア、アクア、アリオン/プレミオの値引額が拡大している。

 もちろん、根底には新型コロナウイルス感染拡大による販売不振が影響しているが、早くも全店扱いを前に値引きが拡大し、全店扱いが始まる5月以降も値引きは拡大していくことが予想される。

 RAV4は5月の全店扱いを前に大盤振る舞いで30万円突破は確実。ノア3兄弟は4月27日に一部改良するので、従来モデルを狙えば35万円引き以上が可能。

 アクアは、ヤリスHVが発売になってから販売不振状態にあり、25万円引きは可能となっている。プレミオは35万円、アリオンは30万円引きが狙える。

※値引き額は時期、地域によって異なりますので参考程度にお考え下さい。

■ユーザーのメリット
・トヨタの全店でトヨタ車を買えるので、複数の店舗に行く必要がなく、販売店同士で値引き競争をさせて可能な限り安く買うことができる。
・今まで付き合いのあった販売店、営業マンから全車種を買える。
・どこのディーラーへ行ってもメンテナンスサービスが受けられる。
■ユーザーのデメリット
・統合前に新車を購入したユーザーが旧チャンネルの販売店で加入したメンテナンスサービスはその販売店でしか作業できない場合がある。
・直接のデメリットではないが、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、アルファード/ヴェルファイア、ルーミー/タンクなどの姉妹車はどちらかに一本化されるため選択肢が少なくなる。

次ページは : 全店扱いに向けて準備を進める各販売店に状況を聞いた

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