いわゆる「コロナ疲れ」を癒やす目的で人々が湘南の海にクルマで押し寄せ、国道134号線が大渋滞を起こしたのが4月18~19日にかけての週末。
続く4月22日(水)に、神奈川県の黒岩祐治知事が「お願いだから今は湘南に来ないで!」という旨のメッセージを発信すると、今度はその他の「首都圏から日帰りで行ける景勝地」に、県外のドライバー&ライダーおよびその同乗者が殺到する事態となった。
その後、騒ぎの発端となった湘南エリアだけでなく、その他観光地も公共駐車場を続々と閉鎖したため、本稿執筆中の4月30日現在、東京都から近い景勝地の人出は大型連休中にもかかわらず、かなり減少している模様。
だが、それでも「地元の人々」は、いまだ恐怖と困惑の只中にいる。
文:伊達軍曹
【画像ギャラリー】本文未掲載カットあり 富士五湖畔に大挙する県外ドライバーの実態
県外ドライバー&ライダーの殺到で湖畔駐車場は閉鎖
例えば山梨県の富士五湖周辺に住む運送業・佐藤一樹さん(仮名)は、県外ドライバー&ライダーたちの直近の行状について以下のように語る。
「湖畔の駐車場が閉鎖されて以降、県外ナンバー車の数はかなり減っています。しかし『それでも来る』という人はいて、湖畔近くの脇道などに勝手に路駐しているのが4月29日時点の実状ですね」
1週間ほど前までは、週末になると他県ナンバーの車やバイクが湖畔の駐車場を埋め尽くし、その一部が地元のスーパーやドラッグストアで買いだめをして回っていたとのこと。なかには駐車場などにゴミを放置する輩も多かったという。
そして地元住民は、人口と感染者が多い都内などから持ち込まれた可能性も高いウイルスとの接触感染を避けるため、地元スーパーマーケットには行けず、仕方なく隣の町や村のスーパーまで足を伸ばして買い物に行っていた。
「地元住民としての本音を言えば、ウイルスが抑え込まれるまではいっさい来てほしくない――というのが正直なところです。しかしまぁ『車やバイクから降りずにいてくれるなら』とも思うのですが、実態はまるで違いましたからね……」
佐藤さんによれば、地元住民用のスーパーで買いだめをして回っていたドライバーやライダーが「ウイルス除去」に気を使っていた様子は皆無だったという。
「私はコロナ騒ぎが起こる以前から、自家用車の除菌と除染は徹底していました。つまりウイルスが数時間から数日間は死滅しないと言われているステアリングホイールやシフトノブの表面、ドアハンドルなどは、乗車と降車のたびにアルコールで洗浄していましたし、今もしています。
しかし、今回押し寄せてきた他県ナンバーのドライバーやライダーで、そういったことをしている人の姿は、少なくとも私は見たことがありません」
スーパーやコンビニでも恐るべき光景が頻発
スーパーやコンビニのトイレで用を足した後、水でちゃっちゃっと手を洗うドライバーやライダーはまだいいほうで、それすらも行わないまま店内をうろつき、次から次へと商品を手に取るドライバー&ライダーもいたという。
「都内などでも医療インフラは逼迫していると聞きますが、そもそも病院や医師の数が少ない富士五湖周辺では、もしも感染者が増えてしまったら医療は完全にパンクし、死ななくて済む人までが死ぬことになります。
そのため、先ほど言ったとおり『来ないでくれ』というのが本音ですが、来るのであれば『乗り物から降りず、お店で買い物もしないでください』と言いたいですね。
どうしてもいらっしゃる場合は最低限、飲食物と衛生用品は自分たちの地元で買ってから来てほしい――と願っています」
諸外国のような法律を持たない日本では、緊急事態宣言下であってもあくまで「自粛要請」という形にしかならないため、「関係ねえよ! オレはオレの行きたいところへ行くぜ!」と考える人を力づくで止めることはできない。
またそこまでではなくとも、「あまり人と接しないで、景色のいい場所を散歩するぐらいなら問題ないでしょ?」と考える人もいるはずだ。
筆者はそこについて議論をするつもりはない。だが「少なくとも地元民はリアルな恐怖を覚えている」ということだけは伝えたいと思う。
そして愛車の「手が触れる箇所」の除染を徹底して車内をグリーンゾーン化しておくことは、もはや「車を愛する者としての義務」になったとも言えるだろう。
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