E型(通称)でパワーアップ
その後、最も走りが変化したのは、通称E型と呼ばれる前後の灯火類やバンパーデザインが変わったモデルだ。
エンジンパワーアップに加えてファイナルギアの変更など、86乗りならずとも見どころの多い変化だったのではないだろうか?
燃費や環境性能ばかりが重視される世の中にあって、モード燃費が落ちる結果も許し、さらにリニアに洗練した走りをと進化させたことは驚くばかり。
アルミテープを採用して、空気の流れに拘っていたことも面白かった。当時、それを付けたり外したりと繰り返しテストしたことがあるが、眉唾物と思っていたにも関わらず、悔しいくらいに走りを変化させたことにも感心した。
個人的にはこの時に初めての買い替えを行ったのだが、その際に同じクルマでもここまで違うのか! と感心するばかりだった記憶がある。
初期モデルではおよそ4シーズンに渡ってサーキットを走り回ったせいか、ルーフ周りにシワがより始めるなどのトラブルがあり、かなりルーズな走りになっていたクルマと比べているせいもあったかもしれないのだが……。
わずかだが小径化されたステアリングを握ってサーキットを走れば、タイヤからの情報がダイレクトに伝わる感覚に溢れ、さらにスロットルを踏み込めばパワーアップとファイナル変更によって、蹴り出し豊かにわずかなスライドもコントロール可能。
まさに手足のように応えてくれる一台に進化していたことが脳裏に焼き付いている。
もちろん、他車に乗っている人からすれば微々たるレベルなのだろうが、86乗りからすれば別物だと断言できる仕上がりに満足した。当初は同じクルマを乗り継ぐのもどうかと思ったが、買い替えてよかったと素直に言えるものだった。
極限状況での使用にも真摯に向き合った
後に現行モデルではABSセンサーの改良にも踏み込んだ。これはサーキットを走る際、縁石などで大入力がある状況でエラーが出ていたことをクリアするための措置だった。
一度エラーが出たABSユニットは、2度と復活せず、その交換におよそ18万円もする状況だったからその改良は羨ましかった(最後に所有していた一台は最新型のひとつ前の型だったので)。
サーキットのような極限の状況なら、壊れても何も文句を言えないのが市販車の世界だが、そこに対しても真摯に向き合い改良を重ねた姿勢こそが、86&BRZの素晴らしさだったように思えてくる。
もちろん、現状ですべてがOKではない。特にスポーツ走行をする状況では冷却関係がまだまだであり、特にミッションに関しては弱さが露呈していた。ワンメイクレースではトラブルを防止するために、2戦に1回はオーバーホールをするのが当たり前だったのだから。
これはタイヤ戦争がもたらした弊害でもあるから、一概にクルマのせいにするのも可哀想だが、次期86&BRZが登場する際には、その辺りを強靭にして登場してもらえたらと願わずにはいられない。
けれども、そんな要求に対してもきちんと応えてくれると期待している。
8年に渡ってコツコツと進化してきた86&BRZなら、きっとそれを達成してくれることだろう。
これまで歩んできた地道な努力のうえでフルモデルチェンジをするなら、手足のように動き、そして速く、強靭なスポーツカーとなるに違いない。
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