■スープラのドライブフィール
スープラのスタイルはオーソドックスである。ファストバックの2プラス2、サイドビューは、明らかにジャグァXJ220からディテールをいただいてはいるが、全体としてはよくまとまっている。
ニュースープラの外観はけっして新しくはないが、旧型よりははるかにいいというレベルにある。
実際にドライブしてみると、シーケンシャルターボによるスムーズな立ち上がり、これはすごいと思う。6速マニュアルボックスのトップはギアレシオ0.793、ファイナルレシオ3.266でたいへん高い設定だが、トップギアでも40㎞/hをカバーできる。
じゃなんのための6速かという疑問は当然残るが、ポルシェ968もそうだが、現代のスポーツカーというものは、かようなものであり、ほんとうにヤル時は6速を使い、やらない時は1、3、5とひとつ飛ばしても走れるのである。
トヨタは伝統的に〝GT〟なるネーミングを好む。この意図はダイナミックな性能と快適性のプライオリティがイーブンだということだろうと私は理解している。この目的に対し、スープラはほぼ満足のいく解答を与えていると思う。
そして、その場合、トヨタの考える快適性は同社のクラウンがスタンダードになる。トヨタにとって〝クラウンのようなスポーツカー〟はきっと理想的なのだと思う。
スープラはまさしくそれで、北米仕様の17インチのファットなタイヤを装着した場合でもクラウンのような乗り心地を実現している。
そのことを好むか好まざるかは別として、このような断固たるポリシーを持っているのは日本のメーカーではトヨタだけだ。
正直言って、そのクラウンスタンダードのトヨタ車を私はあまり好きではないが、主張のハッキリした態度は見事だとも思う。
スープラはすばらしいクルマだが、なにか心をときめかすものを感じない。これはいったい何だろうと私は考え続けた。
おそらくそれは、このスープラもほかのトヨタ車と同じく、〝コスト重視〟の思想が前面に押し出されているからではないかと思う。
スープラは安い(編集註・NAは290万円から、ターボは398万円から)。
しかし、そのことがスーパースポーツカーにとって、どれほど重要なのだろうか。250㎞/hの民主化はどんな効果があるというのだ。
スープラ(A80型)1993年5月誕生
『THE SPORTS OF TOYOTA』のキャッチフレーズとともに誕生したトヨタのGTカー。70スープラに続き北米がターゲットだが、70スープラよりも100㎜短い全長と45㎜短いWBを採用し、軽量化も図った野心的なモデルだった。
リアタイヤのグリップをコントロールしてくれるスリップコントロール(ETCS)やゲトラグ製の6MTなどを装備。最高出力280ps、最大トルク44㎏m というスペックに加え、 素性のいいハンドリングは絶賛された。
- ◎スープラRZ(6MT)テスト結果
- ・0~400m加速 13.51秒
- ・0~1000m加速 24.94秒
- ・最高速度 273.81㎞/h
「徳大寺有恒のリバイバル試乗記」は本誌『ベストカー』にて絶賛連載中です。
コメント
コメントの使い方