前回お届けした「初代NSXは国産車の最高到達点か【徳大寺有恒 名車リバイバル】」は大好評を博し、いまだに多くの「徳大寺有恒ファン」がいることをインターネット上にも示しました。
続く「名車リバイバル」、第2回めはトヨタ・スープラ(A80型)が登場します。
1993年に登場し、2002年に生産終了。いまだ根強いファンの多いスープラですが、この車の登場時、徳大寺有恒氏は何を感じ、何を想ったのか。
本稿末尾にある「スピードの民主化は何をもたらすのか」という考え方は、今もなお斬新だと本企画担当は思います。
※本稿は1993年5月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2015年1月26日号「追悼特集 徳大寺有恒スペシャル」より
■速いというだけではもの足りない
スープラは速いゾ!! それだけじゃない。よく止まるし、曲がるのだ。おそらく現代のスポーツカーで、このクルマのようになんの苦労もしないで、超高速が可能なものはそう多くないだろうと思う。
250㎞/h級のスポーツカーというものは、いかなる時代でも相当なものだ。このスピードを安心してユーザーに任せるのはたいへんな仕事なのだ。
だから、スープラが凄いクルマであり、そのわりに安いのは驚くべきことなのだけど、私はこのクルマ〝すばらしいスポーツカーだ〟とは思っていないのである。
まず、スポーツカーという種類のクルマ、それがGTカーであれ、ともかく世の中ではあまりもてはやされていない。
言い換えれば売れていないことなのだが、これが一時の経済的な要因によるものかどうかはわからない。ともかくマーケットは、世界的にシュリンクしている。
そのなかで、1993年型として登場するからにはそれなりの正当な理由が必要だと思うのだ。ましてや日本ナンバーワンメーカーのトヨタが出すのなら、なおさらそれが必要だろうと思う。
しかるに、ニュースープラは速いという以外、何らの新しさもない。このクラスの、つまり日本で400万円級のスポーツカーというものはどういうクルマであればいいか、という作りの理想も夢も感じられない。
そこにあるのはスカイラインGT-Rよりも速いとか、Zカーよりも速いというだけでは、もの足りないといわれてもいたしかたあるまい。
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