マツダがコロナウイルス感染症軽症患者等向け搬送車両の提供を開始

マツダがコロナウイルス感染症軽症患者等向け搬送車両の提供を開始

 マツダは2020年6月5日、新型コロナウイルス感染防止に向けた支援活動として、新型コロナウイルス感染症の軽症患者や、無症状の病原体保有者などを搬送する車両の提供を発表した。

 この車両は、行政や医療機関から寄せられたさまざまな要望を踏まえ、マツダ「CX-8」をベースにマツダが開発してものだ。マツダE&Tが架装を担当し、納車および車両メンテナンスといったアフターサービスは、提供先に所在するマツダの販売店が行うという。

 今回は、マツダの商品戦略本部長 本橋真之氏と、マツダE&Tの常務執行役員 内藤久佳氏が説明を行ったオンライン説明会で明らかになった、同車両について詳しく紹介していきたい。

文/編集部
写真/MAZDA

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■マツダグループとしてできることを形に

 今回、マツダがCX-8をベースとした「新型コロナウイルス感染症軽症患者等向け搬送車両」の開発にあたって重視した点がはふたつあるそうだ。

広島県に提供される、CX-8をベースとした「新型コロナウイルス感染症軽症患者等向け搬送車両」

 ひとつ目は「緊急性」。マツダグループが保有する技術と設備、人材を集結させて、新型コロナウイルスに対応している行政の要望に迅速に応えることだとして、1カ月という短い期間のなかで開発を完了させたという。

 ふたつ目は「社会貢献性」だ。医療従事者や患者などを支援し、困っていることを解決できるように要望を聞き、形にしたという。

 今回は9台を広島県に販売する形になるが、その売り上げのなかから、広島県が新型コロナウイルスによる医療・経済支援のために設置した基金を通じて、1台につき10万円を寄付するとしている。

■医療従事者の要望を取り入れ 感染リスクを低減する

 前席に座る医療従事者と、感染者または疑いのある患者が座る2列目以降との間に隔壁(パーティション)を設け、前席が陽圧、後席が陰圧になるようにコントロールすることで、後席の空気が前席に行かないように工夫がされている。

飛沫をガードするとともに、前席/後席の差圧空間を作る隔壁(FRP製)。隔壁中央にあるのは、隔壁越しでもストレスなく会話するための通話システム
こちらが運転席側から見た様子。スライド量は制限されており、リクライニングもキャンセルされている

 圧力調整には、本来CX-8が搭載しているものをそのまま使用し、後席側には陰圧を作り出すために強制的に排気するブロアファンを追加。この圧力差で、医療従事者の感染リスクを大きく低減させる仕組みとなっている。

 なお後席側の排気システムには、病院などでも使われる高性能なHEPAフィルターを搭載し、排出される空気にも配慮がされている。

前席と後席に圧力差を生み出すことで、医療従事者の感染リスクを大きく低減する
前席と後席に圧力差を生み出すことで、医療従事者の感染リスクを大きく低減する

 また、広島県内の医療従事者から感染搬送車両への要望として、搬送される人の快適性の確保、運転手の後方視界の確保、患者と医療従事者の会話の頻度が多いため隔壁越しで会話をしやすいこと、実際にちゃんと圧力差が生じているのか確認できること、といった声があったという。今回はこの声を、車両開発やオプション設定に活かしている。

 具体的には隔壁を安心・安全なFRP(繊維強化プラスチック)で製作し、できるだけ大きな窓を設けることで後方視界を確保した。さらに立体的に成型することで、後席の広いスペースを実現している。

実際の架装作業。車両などがそろっている状態であれば、架装は最大で3日あれば可能だという
ラゲッジスペース(運転席側)に追加された、後席を陰圧にするために室内の空気を強制排気する後席排気システム。排出される空気は、高機能のHEPAフィルターでろ過される

 また、全席に装備するフロアマットをラバー(ゴム素材)にすることで、除菌や清掃のしやすさに配慮。座席にはビニールカバーを装備し、感染者搬送後に交換することで、消毒などの作業の負担を軽減できる仕様とした。

 オプションで、前席と後席の乗員が隔壁越しでもスムーズに会話できる通話システムや、前席と後席の圧力差を確認できる差圧計なども用意されている。

こちらが運転席に設けられた、前席と後席の圧力差を確認できる差圧計

 今回の車両販売価格については明らかにされていないが、社会貢献性を考慮して車両本体価格に、架装に必要な最低限の価格を上乗せした形になっているという。

 また、今回広島県への9台の納車するが、ほかにも要望があれば、相談に応じていくとのことだ。

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