もう少し走りのしっかり感が欲しいタント
こうして、タントだけを見れば、とても魅力的なクルマに見える。
軽スーパーハイトワゴンは、このような車室内や荷室の広さ、使い勝手、スライドドアの開口部の幅の広さなど、「停車中に得られる恩恵」に目を奪われてしまいがちだが、こうした部分は、どのメーカーにおいても改良しつくされており、実はどのクルマも出来がよく、大差はない。
N-BOXにあってタントにはないもの、それは「軽スーパーハイトワゴンの弱点を克服した走行性能」と「運転時にありがたいシステム」だ。
軽スーパーハイトワゴンは、背高のボディゆえ、コーナリングが苦手だと思われがちだが、実は高速直進性のほうが、より脆弱である。
ボディ側面の面積が大きく、またタイヤのグリップレベルが低いため、ちょっとした横風や路面の突起で進路を乱されやすい。
こうしたボディ形状を採用する限り避けては通れない弱点であり、これらの弱点に対して、どういった対策を打っているかがポイントとなる。
タントは、ロールやピッチといったボディモーションがやや大きく感じる。
新世代のDNGAプラットフォーム採用により、前型タントに対してシャシー性能が大きく磨かれた、というが、ハンドルを少し動かしたときに出るロールの大きさや、橋の上で横風を受けたときの進路の乱れが大きかったりと、あと少し、しっかり感が欲しい印象だ。
王者N-BOXは、その点がとても優れている。
N-BOXは他車に比べ、上記と同様のシーンに遭遇しても上屋の揺れが小さく、ハンドルから手ごたえもしっかり返ってくるので、直進時も走らせやすく、コーナーでも切り過ぎないため、ボディがグラッとすることも少なくすむ。
まっすぐ走り、かつコーナーも安心して曲がることができるという点では、タントよりもN-BOXのほうが優れているのだ。3月に登場したルークスの走りも、N-BOXに近いレベルだ。
運転支援システムの装着率に決定的な差
そして、タントにとって、より致命的な弱点といえるのが「運転支援システム」搭載率の違いだ。
タントには、アダプティブクルーズコントロールと車線逸脱防止制御が備えられているが、ターボエンジン搭載車のみにメーカーオプションで設定されている。
N-BOXの「Honda SENSING」や、ルークスの「プロパイロット」と違い、売れ筋のノンターボ車には、つけたくてもつけられない、というのは、大きな落とし穴だ。
昨今は、TVCMやディーラーでの告知が功を奏し、走りやすさや走りの質感といった、「運転時のありがたみ」を享受できる方向へと、顧客トレンドが移行しているように感じる。
「自動運転」というキーワードが一般に浸透し、「軽への運転支援技術」も当たり前になってきたなかで、タントは「とりあえず運転支援はついてます。ただし最上級のターボ車のみメーカーオプションで(Xターボは6万5000円、カスタムRSは5万5000円)」というのは、いささか寂しくはないだろうか。
Honda SENSINGを全車標準装備するN-BOXとは、比べるまでもない。
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