ヴィッツに比べて走りが大きく進化
プラットフォームは、ヤリスではTNGAの考え方を踏襲する「GA-B」になり、走行安定性、操舵感、乗り心地が大幅に向上した。
ヤリスでは操舵に対する曖昧さが払拭されて正確性を一層高めた。ヴィッツに比べると、操舵角に対して忠実に車両の向きが変わる。
ヤリスはこの後の手応えもしっかりしており、路面やタイヤのグリップ状態がわかりやすい。カーブを曲がっている最中に路上のデコボコを乗り越えた時も、ヴィッツと違って突き上げ感が直接的に伝わらず、進路も乱されにくい。
そしてカーブを曲がっている時も、直進時も、後輪の接地性が高い。ヴィッツも後輪の踏ん張り感を優先させたが、ヤリスはそれ以上だ。
しかも後輪を安定させながら、前述のように正確に曲がる。4輪すべての安定性が高まった。カーブを曲がっている最中、何らかの理由で不用意にアクセルペダルを戻したりブレーキペダルを踏む操作を強いられても、運転の難しい状態には陥りにくい。
ヤリスがこのような挙動を得られた理由は、ボディを入念に造り込み、足回りが常に正確に作動するからだ。合わせて乗り心地も向上。
安定性を高めれば、乗り心地が硬くなって快適性を悪化させたのは過去の話だ。
今は常に車両の挙動を計算通り変化させることで、運転操作に対する正確な反応、優れた安定性、適度に柔軟な乗り心地を両立できるようになった。それをコンパクトなボディで達成したのがヤリスだ。
ヤリスに対する要望
さらに衝突被害軽減ブレーキも改善された。歩行者や車両に加えて自転車も検知する。右折時には対向車や横断歩道上の歩行者に対応して、衝突被害軽減ブレーキを作動させる機能も備わる。
しかも競争の激しいコンパクトカーだから、ヴィッツと比べて価格は割高になっていない。1.5Lノーマルエンジンを搭載する中級のGが175万6000円だから、価格自体は上昇したが、機能の充実に応じた上乗せだ。
今後の改良としては、まずパーキングブレーキを電動化したい。現在はレバー式だから、車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールが、30km/h未満になると解除されてしまう。
パーキングブレーキを電動化すると、全車速追従型に進化させることも可能だ。追従停車時間が長引いた時は、パーキングブレーキを自動的に作動させられる。
ヤリスはヤリスシリーズの出発点に過ぎない
以上のように、後席や荷室を使う機会の多いファミリーユーザーは、ヤリスを買う時に注意したい。買い物などに使う場合も、後方視界と取り回し性を試しておく。後方視界は後退時の安全性にも大きな影響を与える重要な性能だ。
いっぽう、後席や荷室をあまり使わず、1~2名で乗車するならヤリスが魅力的だ。走りが上質だから、クルマ好きのユーザーも納得できる。
走行安定性が大幅に向上したから、進化した衝突被害軽減ブレーキと相まって安全性も高い。運転支援機能も疲労を抑えて事故防止に役立つ。
なお2020年秋に発売されるヤリスクロスでは、ヤリスで感じた後席や荷室の狭さが少し改善される。
その後には、背の高い空間効率の優れたコンパクトカーも追加される見通しだ。
つまり今後同じエンジンやプラットフォームを使った車内の広い車種も登場してくるから、ヤリスは前席優先の設計に割り切ることができた。ヤリスは「ヤリスシリーズ」の出発点に過ぎない。
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