なぜアルファードはここにきて販売好調に?
東京地区は主要な販売会社がトヨタの直営で占められるため、2019年4月1日に、トヨタ店/トヨペット店/トヨタカローラ店/ネッツトヨタ店の4系列を撤廃して「トヨタモビリティ東京」に統合した。
ほかの地域は直営の販売会社も多く、大半が4系列を残すが、2020年5月以降は取り扱い車種が全店/全車併売になっている。
従来はアルファードがトヨペット店、ヴェルファイアがネッツトヨタ店の専売車種だったから、先代ヴェルファイアやヴォクシーのユーザーが、販売店を変えずにアルファードに乗り替えるのは原則として不可能だった。
担当セールスマンとの付き合いもあるため、多くのユーザーはネッツトヨタ店から離れずにヴェルファイアに乗った。
しかし全店が全車を扱う今は事情が異なる。先代ヴェルファイアやヴォクシーからアルファードへの乗り替えも簡単だ。
また、新規購入する場合も、以前はアルファードが欲しければ、遠方のトヨペット店まで買いに出かける必要があった。それが今なら一番近いトヨタの店舗でアルファードを買える。
このあたりの事情をトヨタ店に尋ねた。「アルファードを扱うようになり、クラウンのお客様が乗り替えるケースが増えている。特に最近は、法人のお客様も、クラウンではなくアルファードを選ぶようになった。TVのニュースなどで、政治家や企業のトップがアルファードを使う様子が報道された影響もあるだろう」と述べている。
アルファードには、2002年発売の初代モデルからフォーマルな雰囲気があった。しかも取り扱いディーラーのトヨペット店は、ハイエースを扱うこともあって法人営業が強い。そこでアルファードが社用車にも使われ、企業の重役、政治家にまで広がった。
この商品特性に、2018年1月のマイナーチェンジで採用された存在感の強いフロントマスクも加わり、アルファードの登録台数がヴェルファイアを抜いた。今では全店/全車併売の効果もあり、アルファードへの乗り替えが一層進んでいる。
ヴェルファイアを販売してきたネッツトヨタ店にも、最近のアルファード&ヴェルファイアの売れ方を尋ねた。
「現時点でヴェルファイアからアルファードへの乗り替えは少ないが、マイナーチェンジでアルファードの方がカッコ良くなった、というお客様の意見は多い」
「今後アルファードへの乗り替えが増えるかもしれない。また下取り車の発生しない新規購入を含めて、ほかの車種から乗り替えるお客様は、ヴェルファイアよりもアルファードを選ぶことが多い」
以上のようにアルファードのフロントマスクがマイナーチェンジでヴェルファイアよりも存在感を強め、全店/全車併売に移行した効果も加わり、アルファードの売れ行きがますます強まった。
販売系列廃止の真の目的は何?
全店併売になると、このような車種ごとの販売格差が必然的に拡大する。系列ごとに取り扱い車種が決められていると、売りにくい車種でも販売に力を入れるが、全店併売になると売りやすい商品に偏るためだ。
この流れはほかのメーカーを見れば分かるだろう。日産、ホンダ、マツダ、三菱など、以前は系列を用意して専売車種もあった。それが全店/全車併売に移行すると、車種ごとの販売格差が広がって車種数が減った。
このように限られた特定の車種だけが好調に売れる状況では、ディーラーの系列は成立しない。経営破綻する販売会社も生じてしまう。
言い換えれば販売系列は、多くの車種をバランス良く売り、販売台数を増やす効果的なシステムだった。販売系列を増やす過程では、困難も多く多額のコストも費やした。
その実績ある販売系列を廃止して、全店/全車併売に移行する本当の目的はリストラだ。
トヨタでも、アルファードが増えてヴェルファイアは減る、ヤリスが売れてアクアは下がる、フロントマスクの派手なルーミーが残りタンクは落ちるという具合で格差が進んできた。メーカーはそこも想定の範囲内で、売れる車種だけを残して効率化を図る戦略だ。
車種の選択肢や店舗の数が減るなら、その代わりユーザーにどのような価値を提供できるのか。レンタカー会社からは「コロナ禍によって公共交通機関が敬遠され、少人数で移動できるレンタカーの利用が増えた」という話が聞かれた。
新車販売を合理化する代わりに、従来とは違うどのようなサービスを構築できるのか。トヨタは日本の自動車メーカーのリーダーだから、トヨタの今後が日本のカーライフを大きく左右する。
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